「友情結婚相談所」をご存知だろうか?
日本で初めて、そして唯一の友情結婚相談所がある。
「カラーズ」だ。
恋愛感情や性的なつながりを持たない新しい形の結婚スタイルってどういうこと?
そもそも「友情結婚」てナニ?と思う方も多いだろう。友情結婚とは、『恋愛感情や性的なつながりを持たない新しい形の結婚スタイル』のこと。
2015年に設立したカラーズではLGBTQ+を含むすべてのセクシュアリティの方のために、性愛を伴わず、異性との結婚を望む方々のサポートをしている。
初めてこの相談所について耳にした時、友情結婚が「新しい結婚の選択肢」というのは理解できた。
ただ、「性愛関係がなく異性との結婚を望む」、これが正直すんなりと理解できなかった。
そこで今回、カラーズ代表の中村光沙(ありさ)さんに近年注目されつつある「友情結婚」、そして友情結婚相談所の未来について詳しく話を聞いた。
――「カラーズ」設立のきっかけから教えてください
「私は大学・就職をアメリカのニューヨークで経験したこともあり、LGBTQ+はとても身近な存在でした。しかし帰国後、アメリカと同じ比率で日本にもLGBTQ+が存在しているにもかかわらず、日本ではカミングアウトをされない方のほうが多いことを知りました」
「カミングアウトをしたくてもできないという方より、カミングアウトに必要性を感じず、むしろデメリットだと感じてる方が多いように感じました」
「日本の文化や風潮などで自分のセクシャリティをオープンにできる環境ではなく、LGBTQ+の理解が広がったとしても、たとえば自分の子供が実際に当事者だと悲しむ親は少なくない。他にも様々な理由でカミングアウトせずに生きていかれる方が多いことを知り、彼らが求めているものは何なのかを調べるようになったんです」
そして2013年に、ふとしたきっかけで「友情結婚」という言葉を知り、衝撃を受けたという。
「当時は異性と結婚することにメリットを感じていても、誰にも相談できずSNSで自ら婚活するしか術がなく、セクシャリティが理由で結婚を諦めている人が多かったんです。そこで、「安心して相談ができ、効率良く友情結婚のお相手が探せる場」の必要性を感じ、友情結婚経験者のメンバーと共に2015年3月にカラーズを創設しました」
「友情結婚」という言葉が生まれたのは実は20年以上前のこと。性的マイノリティの方々がSNSなどで使用していたことから始まったという。
友情結婚にもさまざまな愛のカタチがある
「カラーズ」開設から約10年。これまでの成婚率は約45%で入会者の2~2.5人に1人が結ばれているそうだが、カラーズに入会する方とはどんな人なのか?
「LGBTQ+などのセクシャルマイノリティの方で、異性と性的な行為ができない・したくない、性的対象に見られることに嫌悪感があるなど、性的関係がある結婚を考えるのが困難な人達が希望されます」
「それでも結婚をしたい理由は一般的な結婚と同じです。家族が欲しい、子供が欲しい、老後1人は寂しい、親を安心させたい、そして世間体など。優先順位は人によって違いますが、一般的にこのような理由が多いです」
「入会は有料ですし審査も設けていますので、結婚意欲の高い人が多く在籍しています。さらに全会員を把握したスタッフが客観的に判断しマッチングしております。身元が確かな方と真剣に、効率よく出会いたいという方がご入会される傾向です」
ここまで聞いて、疑問を抱いた方がいるかもしれない。
筆者は思った。
『性的関係がない結婚なのに、子供が欲しいというのはどういうことなのか?』
これについて代表に聞くと、友情結婚でも子供を望む方が多いそうで、子供が欲しい方は“性行為以外の方法(シリンジ法や人工授精等)での妊活になるという。
性行為はないものの、どこにでもあるような、子供のいるあたたかい家庭を築きたい方が多いのだ。
また、実際に会員だった方のこんなエピソードもある。
「子供が欲しいと希望されてご入会された男性なんですが、カラーズでは子供を希望されている方にブライダルチェックを推奨していて、彼にも受けていただきました。ですが後日、無精子症だということが分かり、とてもショックを受けていらっしゃいました」
「でも人生のパートナーが欲しいことに変わりはなく、子供が絶対ほしいという女性以外の方を紹介してもらいたいということでマッチングを変更しました。そして数ヶ月の活動を経て、ご希望通りの方と見事ご成婚されたんです」
「成婚時にお二人がどのようなお約束をされていたかは分からなかったのですが、数年後に養子を迎えたことを伺いました。カラーズで妊活し、出産している夫婦はたくさんいらっしゃいますが、養子を迎えられたというのは数少ない事例なので、とても嬉しく感動したのを覚えています」
他にも、結婚への憧れもありながら仕事熱心でキャリア志向のある女性会員は、「カラーズで婚活をしたことで、結婚が仕事以上のものではないことに気づいた」という理由で清々しく退会されたとか。友情結婚相談所は、自分の人生を見つめ直す場所でもあるのかもしれない。