味の素が女性向けの完全栄養食品を発売した理由

「大勢のふんわりしたニーズ」よりも、「一部の人の強い渇望」を深堀りして開発

考えてみれば、男性は忙しいとはいえ、母親や妻に食事面での健康管理をしてもらえる人が多い。しかし女性は、仕事や家事、育児をこなしつつ、自分で自分の健康管理をしなければならない。そういう女性にこそ、手軽に食べられる完全栄養食品が必要なはずなのに、なぜ今までこういう商品がなかったのか。そしてなぜ、味の素がそこに着目したのか。

じつは筆者がOne ALLの存在を知ったのは、味の素(株)で同じ「新領域グループ」から今年3月に発売された炊飯器専用調理料「白米どうぞ」という商品の発表会だった（関連記事：「美味しさや食感はそのまま！糖の吸収が穏やかなごはんを炊ける味の素の炊飯器専用調理　「白米どうぞ」」）

発売20日で5万食相当（1食1膳換算）を売り上げた「白米どうぞ」（7本入り990円、30本入り3500円、税込み、送料別）

「白米どうぞ」は、炊飯時にお米に加えて普通に炊くだけで、白米のでんぷんを分解されにくい構造に変え、玄米と同程度のGI値にできるという商品。この技術そのものは以前から確立されており、コンビニのお惣菜の風味を長持ちさせフードロスを減らすために、だいぶ前から使われている。その同じ技術で白米のGI値を下げることができたこと、また糖質制限の食事作りをしている人たちが大きなストレスを抱えていることが調査でわかったことから、そのストレス軽減に役立つと考え、同商品を発売したものだという。

いわば、多くの人が「あったらいいな」とふんわり思う商品というよりも、特定の人々が抱く「なくては困る」「絶対欲しい」という渇望を深堀りして生まれた商品といえる。そこが、One ALLと共通しているのではないだろうか。

ちなみに男性と違って女性は、カップ麺やカップライスで一食済ませることに、抵抗を感じたり罪悪感を抱いたりするところがある。One ALLは、「忙しい女性が少しでも楽な調理で食べられる」ことを重視して、当初はお湯をかけるだけの調理法で発売したわけだが、筆者は新提案の「電子レンジ加熱」というステップを加えることで、むしろ手抜きの罪悪感が払拭されるような気がした。もしかしたら、ひたすら手間を省きたいと考える男性向けの「完全メシ」との差別化のカギが、そこにあるのかもしれない。

取材・文/桑原恵美子
取材協力：味の素株式会社