お湯を入れて5分で完成!…のはずが?
ところが、いざ作ってみたらアクシデント発生。この袋の手順どおりに作ったのだが、ショートパスタがまだ硬い…。アルデンテというよりも、もっと硬い芯がある感じ。作り方にコツがあるのかと思い問い合わせてみたところ、意外な事実が判明した。
同様の声があったため、味の素ではパスタの湯戻りを向上するために新しい作り方を開発したという。新しい作り方では、
(1) 熱湯を注いで30秒かき混ぜる
(2) ラップをかけた後、500wの電子レンジで1分30秒加熱
(3) ラップをかけたまま4分〜5分待つ
この商品は公式通販サイト限定商品なので、商品を購入した人全員にこの作り方を伝えており、パッケージの説明も、今後変えていくとのこと。
この作り方で「バターチキンカレー風味のスープパスタ」。丼が深めなのでそう見えないが、なかなかのボリュームだ。
電子レンジ加熱後に5分待つ作り方だと、このようにパスタはやわらかくふっくら戻るので、かなり食べごたえがあるし、濃厚なバターチキンカレー風味のスープによくからんで、とても美味しい。
粒状のヘルシーな大豆たんぱくも入っているので、食感に変化があって最後まで食べ飽きない。カレー風味とはいえまろやかで、辛味は控えめ。女性が好きな味だと思う。
驚いたのは、「One ALL濃厚クアトロフォルマッジのスープパスタ」。「完全メシ」の取材時に聞いた話によると、栄養素の中には苦味やえぐみが強いものもあり、1日に必要な量の1/3量を満たすとどうしても味に影響が出てしまうとのこと。そのためおいしく味を調整する必要があるのだが、これはチーズのまろやかな風味がしっかりあり、苦みやえぐみが一切感じられない。
濃厚でコクのあるスープに、パスタがよく合う。最初のレンジ加熱しない作り方よりも、スープのとろみが増しているようにも感じる。これもまた、女性好みの味だと感じた。味の面では、さすが味の素クオリティ。しかも、1食分が280kcal(日清食品の「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は470kcal)と、ダイエット食としてもよさそう。
One ALL1食分に含まれる栄養素。食事摂取基準における18歳以上女性の各年代の基準値を人口で加重平均し、その1/3を100とした場合熱量、炭水化物、脂質で、食事摂取基準より低め、その他の栄養素は多めになっている
これなら忙しい時のランチに便利そうだが、素朴な疑問も…。そこで味の素の開発担当者に、直接聞いてみた。
「One ALL」開発に取り組んでいる味の素 食品事業本部 コンシューマーフーズ事業部 新領域グループの早川真輝氏。「単品販売もしていますが、定期購入される方が予想以上に多く、嬉しい驚きです」
Q:なぜ味の素が、女性向けの完全栄養食品を作ろうと思ったの?
――そもそも、“女性向けの完全栄養食品”というアイディアは、どこから生まれたんでしょう?
早川氏「完全栄養食品を作ることが決まったのが2020年で、開発には3年ほどかかりました。その時、どこにターゲットを絞って栄養設計をするべきかを探るために調査を行ったのですが、その結果、栄養バランスを気にする男性はサプリメントに頼ることが多いのに対し、女性はサプリメントよりも食事で栄養バランスを整えたいと考える人が多いことがわかりました。一方、女性は、特に子育て中の30代を中心に、育児や家事、仕事に追われ、家族の栄養のことは気にしても、自分は後回しになりがち。そこで、30代の女性をコアなターゲットとして、商品設計をしました」
――なるほど、究極に時間がない子育て中の女性をイメージしたので、作る手順をシンプルにした。その結果、最初に提案した作り方だとパスタの茹であがりにばらつきが出たわけですね。
早川氏「その点は大変申し訳なく思っています。電子レンジ加熱というステップがひとつ増えますが、それでも美味しく召し上がっていただけるほうが重要だと考え、新しい作り方を全購入者にお伝えしました。これはお客様と直接つながることができる自社の公式通販サイトだから可能だったことだと実感しています」
――開発で特に苦労した点は?
早川氏「やはり味ですね。必要な栄養成分を必要な量入れると、どうしても食べにくい味になってしまいますので、通常は濃い味やスパイシーな味付けにするのですが、女性にも好まれるメニューにしたかったので苦労しました。味の素はクノールスープなど、女性向けの商品が多いので、そのあたりのノウハウが役立ちました。また、必要な量の栄養素をすべて入れたところ、粉の量が予想以上に多くなり、予定していたパッケージには入らないことがわかり、作り直したりしました」
――この2種類のメニューは、どうやって決めたんでしょう?
早川氏「30代の女性が好みそうな10種類の味の候補を選び、30代の女性50人に試食していただいて、1位と2位に選ばれたのが今回のメニューです」
Q:市場的には、シニア向けの完全栄養食品のほうが需要多そうだけど?
――確かに、子育て中の女性の健康サポートは重要な問題。ただマーケティング的にみると、市場として圧倒的に大きいのはシニア層のほうで、そっちに特化したほうがビジネス的にはチャンスがあるような気がするんですが…。
早川氏「今回は、自分のために料理を作る時間が圧倒的に足りていないという状況にフォーカスして30代女性にターゲットを絞りましたが、シニア層の方向けの完全栄養食の必要性も、感じています。というのも、One ALLを購入されている方の約2割が、50代から60代の方々なんです。今後はそういう方々に向けてもメニュー開発をしていきたいと考えています」
Q:カップ麺と比べると、ちょっとお高いのでは?
――5食入 2,990円ということは、1食約600円。カップ麺などと比べると高めの価格に感じますが?
早川氏「忙しくて外食する暇もない方が手早くランチを済ませるためによくコンビニなどを利用されると思いますが、ある程度栄養バランスを整えようとすると何品も買う必要があり、あっという間に千円近くになってしまうのではないでしょうか。しかもそれでも、栄養バランスを整え、かつ1日に必要な量の1/3を確保するのは難しいんです」
一般的にランチによく購入されるおにぎり、野菜サラダ、豚汁、飲むヨーグルトなどとOne ALL1食分の栄養成分を比較したグラフ
――定期購入者が多いとのことですが、定期的に食べ続けるとなると、もう少しメニューが欲しいところですよね。
早川氏「お客様からも、もっと違うメニューも欲しいというお声を多くいただいているので、これから徐々に増やしていく予定です。発売前の試食テストで好評だったきのこクリームスープやクラムチャウダーなどもほかに、スープ以外のメニューも検討していますし、今後どんどん改良してさらに進化させていきたいと思っています。また自社通販サイトだけでなく、コンビニや、健康に関心の高い方が集まるドラッグストアなどでの販売も視野にいれています」