ソニー損害保険(以下ソニー損保)は国土交通省が公表している過去10年間(2013年~2022年)の水害被害額を参考に、都道府県別の水害被害額マップを公開。併せて過去の自然災害について振り返るリポートを発表したので、同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
後半では自然災害の増加による火災保険料の改定にも触れているので、こちらも参考にしていただきたい。
近年増加する大雨による被害
近年の自然災害の増加に伴い、大雨による被害が増加傾向にある。令和に入ってから、2019年の東日本を中心に被害をもたらした台風19号や2020年7月の大雨、2022年の台風14号・15号など毎年のように大雨が発生。2023年は大雨による水害被害が多い1年となり、梅雨時期の6月・7月のわずか2か月間で人的被害93名、住家被害2万5262件と甚大な被害が発生した。
今後も地球温暖化の進行により、大雨や短時間に降る強い雨の頻度はさらに増加する可能性が高く、台風や大雨による風水害・土砂災害発生リスクが高まるとともに被害額も増加していくことが予想される。
こうした背景を踏まえ、ソニー損保では「国土交通省が公表している過去10年間(2013年~2022年)の水害被害額を参考に、水害被害の総額や被害額が大きい都道府県を調査しました」と説明している。
■過去10年間(2013年~2022年)の水害被害額1位は「福島県」
国土交通省が毎年公表している過去10年間(平成25年~令和4年)の都道府県別の水害被害額を集計すると、福島県が最も多いことがわかった。
その額は7000億円を超え、2位の広島県と比較すると、その差は約2000億円と非常に大きくなっている。
上位5県をみると、福島県以外の広島県・岡山県・熊本県・福岡県は西日本に属しており、西日本で水害被害額が大きい傾向にあることがわかる。6位から10位は東日本に属する都道府県が続き、被害額は3000億円前後となっている。
全国の過去10年間の水害被害額を合計すると、その額は約7.2兆円に達する。2018年が約1.4兆円、2019年が約2.1兆円と、この2年間だけで過去10年間の水害被害額の約半分(49.1%)を占めている。
近年の自然災害の増加や異常気象が要因と考えられるが、そのなかでも通称「平成30年7月豪雨」と呼ばれる西日本を中心に発生した大雨と「令和元年東日本台風」が大きく影響している。
■2018年の水害被害額は約1.4兆円、西日本を中心に記録的な大雨を記録
「平成30年7月豪雨」は、平成30年6月26日から7月9日に発生した梅雨前線豪雨および台風第7号による集中的な大雨を指す。
当時全国の多くの観測地点で降水量の値が観測史上第1位となり、広い範囲における長時間の記録的な大雨となった。人的被害720名、住家被害5万6478件と甚大な被害であったことがわかる。
2018年の水害被害額は約1.4兆円だが、「平成30年7月豪雨」の被害額だけで約1.2兆円となり、そのほとんどを占めている。
「平成30年7月豪雨」による都道府県別の水害被害額上位3県は、岡山県(約4198億円)、広島県(約3387億円)、愛媛県(約1657億円)となっており、岡山県と広島県は過去10年間の水害被害額上位10位にもランクインしたが、過去10年間の水害被害額の大部分は「平成30年7月豪雨」の被害額であるということが示されている。
■2019年の水害被害額は過去最大の2兆円超え
2019年の全国の水害被害額は約2兆1800億円となり、津波以外の水害被害額の合計が統計開始以来最大となった年だ。また、津波以外の単一の水害による被害額についても、「令和元年東日本台風」による被害額は約1兆8800 億円となり、こちらも統計開始以来最大の被害額となった。
「令和元年東日本台風」は、2019年10月6日に南鳥島近海で発生し、その後日本に上陸した台風だ。関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3・6・12・24時間降水量の観測史上1位の値を更新するなど記録的な大雨となった。
その結果、全国142か所で堤防が決壊、人的被害は463名、住家被害は8万1619件と多大な被害が発生した。
「令和元年東日本台風」による都道府県別の水害被害額上位3位は、福島県(約6798億円)、栃木県(約2610億円)、宮城県(約2530億円)となっており、3県は過去10年間の水害被害額上位10位に入っている。
「平成30年7月豪雨」と同様、過去10年間の水害被害額の大部分が「令和元年東日本台風」の被害額であるということがわかる。
また、福島県の2019年の水害被害額は約6823億円で、過去10年間の都道府県別の水害被害額のなかで最も大きい値となっている。