気温が上昇してトコジラミ問題が浮上してきた。DIME本誌NEXTヒットの作り方、で2024年の課題として国立環境研究所五箇公一先生が予測したトコジラミ問題は、今、現実化しつつある。
人が刺されて辛い害虫で、ホテルや温泉旅館、ネットカフェなどでの発見情報も増えているが、ペットへの被害が心配になる。今回はひびき動物病院院長の岡田響先生にペットのトコジラミ対策について聞いてみた。
犬猫の防虫対策で重要なのがノミ・ダニ対策
――暑くなると同時に、ペットのフィラリア予防やノミ・ダニ等の寄生虫対策がスタートしています。
岡田先生 最近は街中でのクマの発見情報や、山菜取りでクマに襲われたというニュースや、キョンが千葉と茨城の県境を超えた、自治体から持続的に案内されるヒアリやゴケグモ(注1参照)
などへの警告情報と、街中で活動するアライグマの問題(注2参照)などなど、DIME本誌の五箇公一先生の記事(パリ五輪をきっかけにスーパートコジラミが大発生!?生物学者・五箇公一さんに聞く狂暴化する自然の猛威と必要な備え)にあるような野生動物関連の報道や自治体からの注意喚起などはたびたび見聞きする状況ですよね。
家畜も含めて、屋外で活動する動物にはマダニがつくことが珍しくありません。マダニは色々な病気を運ぶことも知られていて、そのうちの一つに最近話題のSFTS(重症熱性血小板減少症)があります。
先日もうちの犬と数時間のハイキングに行ったところ、家に帰ってきたら犬にとても小さいマダニ(幼ダニ)が何匹もついてしまっていました。一応きちんと予防の投薬やお手入れをしていますので、その後は何も起きてはいないですが、毎日、寝室で一緒に過ごすので、もしも寝室で虫が繁殖してしまったら、というのを考えるとゾッとしてしまいますね。寝ているときに虫に刺されまくっていたかもしれません。犬や猫にとっての防虫対策で一番身近なのはやはりノミとマダニです。
ペットの皮膚の異常で害虫の特定は意外と難しい
――ノミとマダニに次いで、最近話題なのがトコジラミです。ペットのトコジラミ対策について教えてください。
岡田先生 インバウンドにより、ホテルや電車などでトコジラミが発生しているというニュースがたくさん報道されるようになりました。ペットの害虫対策というと、ノミ・ダニ対策が中心ですが、最近はトコジラミについても心配している飼い主さんがいるみたいです。私自身はあまり外泊をたくさんしないので、今一ピンと来ない部分もありますが、最近話題のトコジラミですが、愛犬には被害がありますか?っていう質問を頂きました。
幸い、今まで動物病院の患者さん飼い主さんからも深刻な相談はありませんので、「近くでトコジラミが発生して大問題」や「ものすごく被害が深刻」ということではないのですが、これだけ話題になると、特に出張や旅行に行く機会の多い家族がいるご家庭では、「うちのワンコやニャンコは大丈夫なのかしら?」って思うかもしれません。
トコジラミについては一つ参考ページで横浜市のサイト(注2参照)を参考にしてみてください。カメムシの仲間で、性質として、昼は隠れていて、夜に這い出してきて吸血しに来る。そして、人だけではなく、ペットも刺されて吸血されます。
ネットでは被害に遭った人の刺された皮膚などがたくさん掲載されていますが、トコジラミで犬猫の被害が深刻であるという記事はほとんど掲載されていません。事例があったとしても、おそらく相当わかりにくいからだと思います。
ペットも、刺されれば同じように痒みが強いのではないか?ということは安易に想像できます。なぜなら、ノミやダニも含めて、虫刺されというのは、皮膚炎の中ではとても痒い方に入るからです。
しかしながら、実際、ペットのかゆみで相談に来られても、それが「トコジラミが原因です」と診断するのはなかなか難しく、一緒に暮らしている飼主さんでも、何の害虫が原因かは、あまりわからないかもしれません。症状として、虫刺されっぽい皮膚の異常があっても、ノミやマダニや蚊など、他の虫が原因のことが多いのです。
原因が特定できていない状況でも、一緒に暮らす家族が同時に刺されていたりして、害虫が特定できるようなヒントがある場合は、実際にその虫が見つかっても見つからなくても、予防も含めて診断的に駆虫薬をあたえてもらうようにお願いすることが多いです。
当院に来院される子たちは、ノミやマダニ、フィラリアの予防は結構な確率で実施してくれているため、寄生虫が原因の皮膚病の子は比較的少ないです。でもゼロではないです。