背脂が浮いたこってり濃厚なラーメンや、あるいはチーズたっぷりのピザなど、あまり身体には良くなさそうに思えるものの、食べてみれば期待通りにおいしいと感じる〝背徳の〟フードアイテムは今や挙げればきりがない。背徳感に浸りながらも「不健康食品はおいしい」と考えられているのはどうしてなのか――。
「不健康食品はおいしい」という固定観念
個別具体的には必ずしも不健康と決めつけられるものではないが、街中で手軽に食べられるラーメンやカレー、あるいはハンバーガーやピザなどは一般的にはあまり健康に良い食事とは認識されていないだろう。特にラーメンのスープを全部飲んだり、ハンバーガーのお供に甘い炭酸飲料を飲んだりすることは健康面から推奨されるものではない。
サイエンス的に健康食品とはビタミン、ミネラル、食物繊維、良質の油などの必須栄養素がカロリーに比較して豊富に含まれる食品であり、たとえば果物、野菜、全粒穀物、ナッツ、種子類、脂肪の少ない肉などが含まれる。
これら健康食品は身体の機能をサポートし、健康を促進するためにきわめて重要であり、体重の維持と代謝の調節に役立つ。これまでの研究でこれらの健康食品の摂取と心臓病、糖尿病、がんなどの慢性疾患のリスク低下も関連付けられている。
一方、不健康食品は総じて量が多くカロリーは高いものの、栄養価が低いことが特徴だ。これらの不健康食品は往々にして過剰な砂糖、低品質の油、ナトリウムが含まれおり、一般的な例としてはスナック菓子類、砂糖入りの飲料、ファストフード、食品添加物を多用した加工食品などが挙げられる。不健康食品を頻繁に摂取すると、肥満、心臓病、高血圧、2型糖尿病などのさまざまな健康問題に繋がる。
また不健康食品は通常、風味を高めるためにさまざまな添加物を取り入れてきわめておいしくなるように設計されている。絶妙に配合された調味料や添加物でいわば脳が騙されていることにもなるのだ。
そしてこれまでの多くの研究により、人々は一般的に不健康な食べ物のほうが健康的な食べ物よりおいしいと感じていることが確認されており、人々は健康さと味の間にトレードオフがあると認識し、健康的なメニューは風味が落ちると考える傾向が定着しているのである。
つまり多くの人々は特定のメニューについて、不健康であるとわかっていながら味と満足感を優先して選び、実際に食べていることになる。おいしい健康食品が存在することは理解していても、それらは往々にして高価でコスパが悪く手が出なかったりもするし、おいしいにせよそのおいしさは不健康食品には敵わないと考えているのだ。
ご存知のように人気のラーメン店の中にはコンスタントに食べ続ければ明らかに健康問題に繋がりそうなメニューを出す店がある。そうした店の根強いファンもまた、背脂を〝マシマシ〟にした大量の麺を啜ることが不健康であることをわかっていながらも、その味と食べ応えを存分に堪能しているのだろう。まさに〝背徳の味〟である。
ではこの「不健康食品はおいしい」という観念はどのようにして定着してしまったのか。