音声広告媒体を扱う〝現場〟にいる人間は、音声メディアの勢いをどう感じているのか。各社で調査したデータとともに業界の〝今〟を語ってもらった。
オトナル 代表
八木太亮(たいすけ)さん
2013年、ウェブメディアを運営する株式会社オトナルを創業。その後、Webメディア事業を売却、音声コンテンツ、音声広告など音声メディアに特化させた会社へ変貌させた。
生活時間に入り込む音声メディアの浸透性
個人でも手軽に「配信」ができるポッドキャスト、パソコンやスマホで「放送」が聴取可能なradiko。数多くの音声番組をネット上で聴取可能な今は、音声メディア全盛の時代と言っても過言ではないだろう。音声メディアへの広告代理事業を展開する会社を経営する八木さんは、右肩上がりで増えている取り扱い広告件数に関して、こう分析する。
「弊社の調査では、ポッドキャスト体験の87%が〝ながら聴き〟。いろんな業界で『可処分時間の奪い合い』なんて言葉を使いますが、音声メディアはランニングやドライブといったオフタイムの可処分時間にも、一方でオンタイムにも入っていける。あらゆる隙間に入る音声メディアの浸透性が注目されていると思われます」
radikoが全国のラジオ局の放送や、過去の放送を聴くことができる機能を実装したことも大きい。これにより配信と同じ感覚でラジオを聴けるようになり、放送と配信の壁がなくなった。ラジオの受信方法や聴取時間のグラフを見ると、特にZ世代の間でポッドキャストなどと同じ感覚でラジオ局の放送を聴いている実態がうかがえる。
ポッドキャストが手軽に配信できるようになったのも大きいと八木さんは指摘する。
「2010年頃のポッドキャストは配信のハードルが高かった。なのでエンジニアがしゃべるテック系の番組など、配信技術を持つ人のコンテンツが多かった。その後、無料で手軽に配信できるようなサービスが登場して、女性ふたりがカフェでトークをしているような配信など、コンテンツの幅が広がりました」
目から入れていた情報を耳から吸収するものへと変換、読書の時間をながら時間に変えた「オーディオブック」の登場も、音声メディアの勢いを加速させた。
そんな音声メディアの今後を八木さんはこう予想する。
「これからは耳の可処分時間の奪い合いとなるでしょう。音声メディアは映像と違い、ニッチなものが支持される傾向があるので、一部の人の心に深く刺さる濃いコンテンツがたくさん出てくるのではないでしょうか」