「2030年までに新車販売のすべてをBEVにする」という目標を掲げるスウェーデンのボルボ・カーズ(以下、ボルボ)。そのクルマ作りは、走行時だけでなく、製造から廃棄までの過程で排出される二酸化炭素(CO2)をトータルで削減し、2040年までには、事業全体で CO2排出量を実質ゼロとすることを目標に進められている。そんなボルボが「世界の激戦マーケット」ともいわれるCセグメントに投入した新型BEV(バッテリーEV)がコンパクトなSUV「ボルボEX30」。ボルボのBEV史上、もっともコンパクトという、サイズ感とボルボらしいクリーンなデザインのニューカーマーは、BEV市場でどんな化学反応を起こすのか?
オーバーハングは短めだが、長めのホイールベースのため、伸びやかなプロポーションを実現している。2024年度のCEV(クリーンエネルギーヴィークル)補助金は45万円。
北欧育ちの佇まいが日本の風家にも馴染んでいく
スウェーデン西部にある国内人口第2の都市「イエテボリ」は、ボルボ・カーズ(以下、ボルボ)が本拠を置くことでも知られる工業の中心地。一方で、街の中央をゆったりと流れる運河と、歴史を感じさせる町並みが、訪れる人の心を穏やかに包んでくれる美しい港町でもある。取材で何度となく訪れ、短い間でも過ごしているうちに、お気に入りの場所も増えていく。
年間300万人もの人が訪れる北欧最大の遊園地「リセベリ」、荘厳なる佇まいのイエテボリ大聖堂、そしてホッとするのは美しい水辺の風景と、緑豊かな町並み。工業都市とは言え、どこか時間がゆったりと流れている。「あ、こんな街でボルボは作られているんだなぁ」と、素直に納得してしまう。
そんなボルボのブランドイメージと言えば、あくまでも個人的な感想だが「クリーン、クレバー、そして頑なさ」。クリーンな天然素材などを多く使い、シンプルで美しい北欧デザインで内外を仕上げたボルボ車に乗ることは、クレバーさの証、と言った感覚を抱いてきた。そして頑なさとは「信念を曲げずに貫くところ」だろう。
例えば1959年のこと、ボルボは3点式シートベルトを発明し、特許を取得するのだが、「安全は独占するものではない」という信念によって、この特許を無償で公開した。これにより、世界中の自動車に3点式シートベルトが普及し、多くの命を救ってきた。以来、ボルボは頑なまでに最高水準の安全を追い求め、「安全はボルボのDNA」としながら車を製造し、世に送り出してきた。
そして現在、築き上げてきた安全をベースに、電動化を始めとした脱炭素社会へのシフトを大胆に進めている。車から排出される排気ガスはもちろん、開発・製造から廃棄までのライフサイクルにおいて大幅なCO2削減を掲げ、着実に目標を達成するための尖兵と言えるのが「ピュアエレクトリック」とボルボが呼ぶBEVモデルだ。
日本ではクロスオーバーの「C40リチャージ」、SUVの「XC40リチャージ」、そしてボルボのBEVとして、もっともコンパクトなSUV「EX30」をラインアップ。この他、日本未導入の「EX90」と「EM90」の2種を合わせ、ピュアエレクトリックモデルは全5車種を揃えている。もちろん2030年のフルラインBEV化に向けて さらに充実していくことになる。
そんな中で、ボルボがBEV専用の最新プラットフォーム(SEA)を使って開発した「EX30」が上陸。全長4,235mm、全幅1,835mm、全高1550mmという、日産リーフとほぼ同じサイズ感と、BEVとしては比較的軽量な1,790kgというスペックで登場したEX30は、日本の風景にもすんなりと溶け込むように現れた。奇をてらったところのないシンプルでクリーンなデザインの仕上がりの良さは、さすが北欧デザインと言ったところだ。