NVCを取り入れると、関係性はこんなに変わる!
では、具体的な例として、子ども部屋の床に物が散らかっているのを目にしたときの一般的な親の反応と、NVCを取り入れた場合との違いを比較してみよう。
一般的な親は、子ども部屋に物が落ちているのを見たとき、「部屋が汚い!」と評価をし、「なんであなたはいつもこうなの!?」と決めつける。そして「早く片づけなさい!」と命令する。子どもは反抗して片づけを拒むか、または、親への恐れから渋々片づけを始めるかのどちらかとなる。これが「パワーオーバー」の関係だ。
一方、親がNVCを取り入れた場合、子ども部屋に物が落ちているのを見たときに、まずはひと息ついて、気持ちを落ち着かせる。そして、今の状況を観察し、自分の感情に向き合ったうえで、ニーズを理解し、子どもにこんなふうにリクエストをする。
「床におもちゃが4つ、パンツが3枚落ちているね(=観察)。物が落ちているのを見ると、ママ(パパ)はイライラするし、悲しくなるな(=感情)。私にとっては整理整頓すること、家族が協力することが大事だし、私が言っていることを理解してほしいと思ってる(=ニーズ)。これを聞いてあなたはどう思うか、教えてくれる?(=リクエスト)」。
すると子どもは「どうやって片づけたらいいのかわからなくて」「いつ片づけるかは自分で決めたいの」など、自分の感情やニーズを伝えてくれるようになる。この手法を繰り返していくことにより、お互いを尊重した豊かなつながり、つまり「パワーウィズ」の関係を築いていけるというわけだ。
『NVC 非暴力コミュニケーションワークブック: 親と子どもが心でつながる「キリン語」の子育て』
本文内図説より。
kokoさんの新刊『NVC 非暴力コミュニケーションワークブック: 親と子どもが心でつながる「キリン語」の子育て』はNVCを子育てに活用するためのガイドブックだが、NVCは海外では企業研修にも採用され、マイクロソフトのCEO兼会長のサティア・ナデラ氏が社内に導入したことでも知られている。後編では、NVCをビジネスの現場で活かすためのヒントを紹介しよう。
後編はこちら
『NVC 非暴力コミュニケーションワークブック: 親と子どもが心でつながる「キリン語」の子育て』
koko 丹羽順子 著(小学館)
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著者 koko(丹羽順子)氏 プロフィール
1973年、東京生まれ。NVC(非暴力コミュニケーション)、瞑想、ブレスワーク、セクシャリティーのガイド。2017年、アメリカ最大のNVCの団体、BayNVC主宰の年間リーダーシップ・プログラムを修了。対面とオンラインでNVC講座を開催している。ヨガとサーフィンを愛し、平和と自然あふれる環境先進国家コスタリカ共和国と日本の二拠点生活中。著書に『「小さいことは美しい」~シンプルな暮らし実践法』(扶桑社)など。
取材・文/志村香織 撮影/五十嵐美弥