株価トレンドの分析には各種のチャートが使用されるが、その中で国内はもちろん、海外でも広く認知されているのが一目均衡表(いちもくきんこうひょう)だ。
これは戦前の1936年、東京に本社を置く都新聞社の商況部部長だった細田悟一氏が、7年の歳月と延べ約2000人の人材を投入して完成させたとされる。
今回、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩氏から届いたリポートは、この一目均衡表を元に日経平均株価を分析しているので、早速その概要をお伝えする。
日経平均は3月に4万1000円台をつけるもその後調整気味、そこで一目均衡表でトレンドを確認
日経平均株価は2024年3月22日の取引時間中(以下同じ)に4万1087円75銭の高値をつけた後、調整色が強まり、4月19日には3万6733円06銭まで下落した。その後は徐々に持ち直しているが、直近で3万9000円台の定着に苦戦しており、上値の重い展開が続いている。
そこで今回のレポートでは、テクニカル分析を使って、日経平均の目先の値動きを探っていきたい。
一般に、テクニカル分析で使用されるチャートは、「トレンド系」と「オシレーター系」に分類される。トレンド系チャートは相場のトレンド判断に適し、オシレーター系チャートは相場の過熱感の判断に適していると言われている。
今回は、前述のとおり3月に4万1000円台をつけた日経平均について、上昇トレンドの持続性を確認するため、トレンド系チャートの代表格である「一目均衡表」に注目した。
■一目均衡表で日経平均は下落トレンドには至っていないものの、上昇トレンドは弱まっている状況
一目均衡表は、「転換線」、「基準線」、「先行スパン1」、「先行スパン2」、「遅行線」という5つの線で構成される。これら5つの線と日足の位置関係が重要で、例えば、(1)転換線が基準線を上抜けている、(2)遅行線が日足を上抜けている、(3)日足が雲(先行スパン1と先行スパン2に挟まれた領域)を上抜けている、という3つの条件がそろうと、「三役好転」という、非常に強い買いシグナル(上昇トレンド)と解釈される。
反対に、3つともすべて下抜けとなってしまうと、「三役逆転」という、非常に強い売りシグナル(下落トレンド)と判断される。
そこで、実際に日経平均の一目均衡表をみてみると、5月24日時点では、(1)転換線が基準線の上に位置し、(2)遅行線が日足と重なっており、(3)日足は雲の中に位置している(図表)。
つまり、三役好転の3条件のうち、(1)のみを満たす状況となっていることから、上昇トレンドは弱まっていると判断できる。
■5月末3万8500円付近がトレンドの分岐点に、ただ5月のトレンドが6月再転換の展開もありうる
したがって、当面は日経平均が雲の下限である先行スパン2を下抜けるか否かが焦点になると思われ、その先行スパン2は、5月27日から月末31日まで、3万8471円19銭に位置している。
そのため、仮に日経平均が今週、3万8471円19銭を大きく下回って取引を終了した場合、一目均衡表で「三役逆転」の3条件が満たされ、下落トレンドに転じる可能性が高まる。
ただ、雲の下限である先行スパン1は、5月29日から31日まで38,582円17銭へ低下しており、日経平均の終値がこの水準を大きく上回れば、上昇トレンドは継続となる。
このように、月末3万8500円付近はトレンドの分岐点として注目されるが、6月1日から28日までは比較的雲が薄い(3万8200円付近~3万8900円付近)ため、今週、雲の上抜け(下抜け)度合いが小さければ、6月に再び下抜け(上抜け)という展開も想定される。
構成/清水眞希