満開になれば一目見ようと交通費・ガソリン代をかけて名所へわざわざ足を運び、木の下ではレジャーシートを敷いて酒宴を催す……。桜には、人の消費を喚起する力がある。その美しさにほだされて財布のひもを緩めるのは、どうやら日本人だけではないようだ。
ビザ・ワールドワイド・ジャパンはこのほど、日本が誇る桜の開花シーズンと観光および決済額の増加との間の深い関連性を明らかにする、最近の分析結果を発表した。本分析はVisaNetデータに基づく。
1.桜の開花と消費・訪日観光客数
2024年には、桜の開花期間*中に、17の都道府県**のうち13の都道府県で支出や訪日観光客数の顕著な増加が観察された。この傾向は、桜の開花前線、つまり南から北への移動とも関連性が見え、桜の開花の世界的な魅力とそれが世界中の観光客を引き寄せる魅力を効果的に示している。(図1)
*開花期間は、開花予想日から、満開予想日後一週間と定義。開花予想日等については、こちらを参照。
**17の都道府県は青森県、宮城県、石川県、東京都、山梨県、岐阜県、愛知県、京都府、静岡県、兵庫県、大阪府、広島県、奈良県、山口県、三重県、福岡県、鹿児島県
桜のシーズン*の影響は都道府県の特性によって大きく異なると思われ、例えば、文化体験や自然志向の観光で人気のある京都、奈良、石川、山梨、三重などの県では、桜のピーク週**には通常期間と比較して週間訪日観光客数が2倍に増加した。
一方、商業と観光の主要ハブである大都市の大阪や東京などは、訪日観光客数の増加と桜の開花期間との直接的な相関関係は少ないものの、これらの都市では桜のシーズン中に週間訪日観光客数が60-70%増加した。(図2)
*桜のシーズンは、3月から4月と定義している。
**桜のピーク週とは、桜の満開日近くの最も訪日観光客数が多い週を指す
Visa Destination Insights (VDI)による分析で、訪日観光客の興味深い人口統計が明らかになった。特にシンガポール、インドネシアおよび香港からの旅行者は、桜のシーズン中、最も出費が多く見られた。
さらに、ドイツやイギリスを含む長距離路線からの旅行者による総支出は大幅に増加したことがわかり、総支出は約95%から110%増加*といった驚異的な結果が明らかになった。これは、旅行者数が70%から90%増加*し、旅行一回あたりの支出が約15%増加*したことに起因していると思われる。(図3)
*VisaNetデータ、2024年3月~4月の日本におけるカード会員のクロスボーダー支出額・取引額に基づく。“増加“は、2024の桜の開花期間におけるカード会員のクロスボーダー支出額・取引額と桜の開花期間前の52週間に基づく。
2.桜の開花とタッチ決済
桜が徐々に開花していくかのように、タッチ決済への移行も、滞在期間中、使用率が平均14%も上昇するという結果が出ている。この上昇傾向は、旅行の初日と7日目またはそれ以降の日のタッチ決済の浸透度を比較して計算され、訪日観光客が滞在する期間が長いほど、タッチ決済を利用する可能性が高くなることを示している。
アメリカ、タイ、カナダ、フランスなど、タッチ決済成熟度が高い国や地域からの訪日観光客は、初日からこの支払方法をすばやく採用し、タッチ決済利用の増加傾向を大いに推進している。しかし、タッチ決済成熟度が低い国や地域からの訪日観光客は、4日目以降のタッチ決済使用率に目立った変化は見られないことがわかった。これは、典型的な旅行期間が短いためと考えられる。