令和6年度の税制改正により、6月から所得税と住民税が減税される「定額減税」が実施される。この「定額減税」の存在や、詳細を知っている人はいったいどれくらいいるのだろうか?
そこで、登録者数55万人超のYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原 由一氏はこのほど、25歳以上60歳未満の会社員の男女全国929人を対象に「定額減税」についてアンケート調査を実施し、その結果を発表した。
6月から「定額減税」が実施されることを知らない人は約6割
まず、「扶養家族はいるか?」と聞いたところ、「はい」が30.6%、「いいえ」が69.4%という結果になった。
続いて、扶養家族の有無それぞれに「今年の6月から『定額減税』が実施されることを知っているか?」と聞いたところ、「知っている」(統計:42.0%、あり:59.2%、なし:34.4%)、「知らない」(統計:58.0%、あり:40.8%、なし:65.6%)となり、約6割が知らないということがわかった。また、扶養家族の有無の違いで認知度も約25ポイントの差があった。
「定額減税の実施を知っている」と回答した390人(あり:168人、なし:222人)それぞれに、「『定額減税』について知っていることは何か?」と聞いた。扶養家族の有無にかかわらず最多は「定額減税(4万円)で減税される税金の内訳は『所得税3万円』『住民税1万円』」(統計:65.6%、あり:63.7%、なし:67.1%)、続いて「扶養家族の有無で定額減税の金額が変わる」(統計:33.1%、あり:42.3%、なし:26.1%)となった。また、全体的に扶養家族ありのほうがなしよりも詳しいこともわかった。
税理士・菅原由一氏がわかりやすく解説 「定額減税4万円って何?」
6月から実施される定額減税では、1人あたり4万円が減税される。この定額減税は仕組みが非常にややこしいため、「難しくてわかりにくい」という声が多いようだ。そこで今回は、どのように減税されるのかなど、定額減税の仕組みをシンプルにわかりやすく解説する。
■定額減税の仕組み
定額減税では、対象者1名当たり所得税が3万円、住民税が1万円減税される。対象となるのは、同一生計配偶者または扶養親族(以下、「扶養家族」と記載)になる。ただし、給与が2,000万円を超える人は対象外だ。
ここではわかりやすくするために、単身で扶養家族のいない、月給30万円の給与所得者Aさんを例に説明する。
月給30万円のAさんのひと月当たりの社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料など)は44,250円、所得税は5,950円、住民税は12,741円掛かり、手取りは237,059円だ。
定額減税実施後の月給は(図1)のようになる。
7月から10月の手取りは6月より下がるが、基本より上がった。11月は5,700円の所得税が掛かっているので、所得税の定額減税は11月で終わることがわかる。12月は年末調整があり、所得税の金額は人によって異なるため、手取り金額は不明となる。
■定額減税の流れ
では、どうして上記(図1)のような流れになるのだろうか。
所得税の3万円は毎月の源泉所得税5,950円から減税される。6月から10月の5か月間で29,750円が減税された。3万円のうち29,750円が減税されたので、まだ250円減税できる。11月の所得税は本来5,950円だが、残りの減税額250円を引いた5,700円となる。
ここで3万円すべて減税した。これは、ボーナス(賞与)なしの月給だけで計算したが、夏のボーナスがある場合は、ボーナスの所得税からも減税できるため、定額減税が早く終わる可能性もある。
住民税の計算は所得税と異なる。国は、今年の6月は定額減税の影響で住民税を徴収しないと決めた。(※1)そのため、7月以降の住民税は、(図1)の計算により12,990円となる。
※1 住民税は原則6月から翌年5月までの12か月間給与から徴収するが、今年は定額減税の影響で7月から翌年5月までの11か月間となる。
これらの計算はすべて扶養家族のいない単身者が対象だ。一方、扶養家族がいる場合、所得税は本人の3万円の他、扶養家族1人につき3万円、住民税は本人の1万円の他、扶養家族1人につき1万円減税される。
例えば、専業主婦の奥さんと子供が2人の世帯は、定額減税も所得税は12万円(4万円×4人)、住民税は4万円(1万円×4人)の合計16万円になる。所得税の場合は6月から12月までの間に12万円減税しなければならないが、単身者の3万円でも11月まで掛かったことを考慮すると難しい。
定額減税がしきれないと見込まれる方に対しては、「調整給付」という形で、おおよその差額が個人住民税を課税する市区町村から給付される。手続等に関しては、お住まいの市区町村によって異なる。
(※2024年4月時点の情報になる。)
■菅原 由一氏プロフィール
1975年、三重県生まれ。お客様の85%を黒字に導く節税と資金繰りの専門家。
2023年1月に開設したYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』はチャンネル登録者数51万人を突破。ブログ 『脱!税理士 菅原のお金を増やす経営術!』は全国税理士ブログランキング第1位を獲得し、アメブロ【公式】トップブロガーに選任。講演実績はGoogle、アパホテルなど上場企業、外資系企業も含め1,000回を超え、各メディアからの取材も多数受ける。書籍『究極の資金繰り』『激レア資金繰りテクニック50』(共に幻冬舎)は、累計2.7万部のベストセラーとなる。2024年2月22日に『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』を発売。
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<調査概要>
調査期間:2024年5月7日~8日
調査手法:インターネット調査
調査対象:25歳以上60歳未満で年収2,000万円未満の会社員(正社員)の男女全国
有効回答者数:929人(20代:276人、30代:365人、40代:191人、50代:97人)
調査機関:Freeasy
構成/こじへい