賞金がかかると減量達成率が向上する
男性を対象とした研究から、金銭的なインセンティブがあると減量目標の達成率が有意に向上するという結果が報告された。
第31回欧州肥満学会(ECO2024、5月12~15日、イタリア・ベニス)で英スターリング大学のPat Hoddinott氏らが発表し、同14日に「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に論文が掲載された。
この研究におけるインセンティブは、設定された減量目標を達成した場合に、最大400ポンド(約8万円)を受け取れるというもの。研究に参加して減量に成功したNevil Chesterfieldさん(68歳)は、「私にとって研究参加は大変有意義だった。もちろん金銭的インセンティブは重要だったが、大学の研究に参加するということに価値があると思えたし、将来の医療政策に役立てるために行うという研究趣旨の説明にも真剣さを感じた」と語っている。
この研究は、肥満(BMI30以上)の男性585人(平均年齢50.7±13.3歳、BMI37.7±5.7)を対象として実施された。
参加者は無作為に3群に分けられ、1群は単に体重を減らすように指示した対照群とし、他の2群には減量をサポートするためのテキストメッセージを毎日送信した。さらにそのうちの1群には、テキストメッセージの送信に加え、3カ月後に5%の減量を達成したら50ポンド、6カ月後に10%の減量を達成したら150ポンド、12カ月後にもその体重を維持していたら200ポンドを支給することとした。
12カ月間の追跡調査を完了したのは426人(73%)だった。体重変化率は、対照群は-1.3±5.5%、テキストメッセージのみの群は-2.7±6.3%、インセンティブあり群は-4.8±6.1%だった。対照群を基準として体重変化率の差を比較すると、インセンティブあり群は平均差(MD)-3.2%(97.5%信頼区間-4.6~-1.9)で有意差があった(P<0.001)。一方、テキストメッセージのみの群はMD-1.4%(同-2.9~0.0)だった(P=0.05)。
インセンティブあり群に割り付けられていたCiarán Gibsonさん(35歳)は、「これまで何年も、食事と運動による減量や減量後の体重維持に苦労してきた。この研究に参加することで、目標達成のモチベーション維持というメリットを得られるのではないかと期待した。参加によって実際に自分の体重減少に責任を感じ続けることができ、より健康的なBMIになれたことに満足している」と話している。
もちろん、肥満者の減量を促すために400ポンドを支給するという手法に眉をひそめる人もいるだろう。論文の共著者の1人である英クイーンズ大学ベルファストのFrank Kee氏もそのような見解に同意を示しつつ、「過体重や肥満に起因する巨額の医療コストを勘案した場合、このような介入の減量効果が長続きするのであれば、長期的には元が取れると考えている。われわれは現在、肥満対策という課題について、医療経済的な視点で詳細な検討を重ねているところだ」と述べている。(HealthDay News 2024年5月15日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2818966
構成/DIME編集部