体験学習や自律型学習など、小中学校では新たな学びが求められており、民間企業が授業を届ける「出前授業」が多く見られる。SDGsに関係する学びなど、学校の授業では学べない社会や世界に目を向ける必要性が出てきている点も背景にある。
今回は、日産自動車、パナソニック、ランスタッドの出前授業の一端を取り上げ、小中学生にもたらす学びの可能性を探る。
1.日産自動車の特別授業「なかの電動化スクール」でEVの活用可能性を学ぶ
日産自動車が、今年3月に東京都中野区の学校法人新渡戸文化学園にて、小学生向けの特別授業「なかの電動化スクール」を開催した。
日産は2010年に世界で初めてグローバルな量産型EV(電気自動車)「日産リーフ」を発売するなど、EVにおいて先駆的な取り組みを進めている。そうした中、未来のEVオーナーとなる子どもたちにEVの強みはもちろん、EVが非常時の蓄電・電気供給に役立つ点から地域活性につながるところまでを学びに加えた。
「EVが活躍する未来のまちづくり」をコンセプトとし、体育館を7メートル四方の「ミニチュア中野」に見立て、手回し発電型の特製ミニ四駆キットに触れる機会を設けながら、子どもたちにEVを中野区の地域活性に役立てるアイデアを募った。さらにそのアイデアを形にする工作も行われた。
●「新しい学び」となるポイント
今回の授業で新しい学びとなるポイントについて、日産自動車の担当者は次のように話す。
「自分たちの身近な街でEVを活用させることによって、地域に対する責任感を感じ、より没入感をもって真剣に考えてもらえるのではないかと考えました。また電気をためられるなど街のインフラ的な魅力についても幅広く知ってほしいと思いました。私自身もミニ四駆で育ち、小さい頃のものづくりやものいじりの経験が今につながっているので、実際に作ってもらうことによって好奇心や興味を持ってもらいたいとも考えています」
●得られた学び
実際に、参加した子どもたちはどのような学びが得られたのだろうか。新渡戸文化学園の理事長 平岩国泰氏は次のように感想を述べた。
「街に電気を供給できるなど、車の大きな役割を一つ発見し、新たな視点を手に入れたことが大きかったです。今までは『できたものを消費する』だけだったところ、今回は街づくりの主体者になり、自分たちも街の一員であることを感じてもらえたのが、大きな一歩であり、嬉しく思いました」
●今後の展望
今後の出前授業の展望について、日産担当者は次のように述べる。
「今後は、授業を全国各地に展開していきたいです。今回は大規模になったため、先生一人でコントロールできるよう、もう少し授業自体をメンテナンスしていきたいです。手ごたえは感じましたので、ぜひ実現したいです」
日産は、先日、俳優の満島真之介氏が1人6役で、EVのある人生を演じるWebムービーを公開した。EVは年齢問わず、さまざまな人のライフスタイルにも浸透しうることがわかる。普段の授業では学べないEVの可能性について子どもたちが学ぶことで、より良いEVを含めた自動車社会が作られるだろう。