部品点数を抑えつつ精巧さを保つ
最後に紹介するのは、「不動の王様」タミヤ模型の製品である。
田宮模型のミリタリーモデルといえば、まず思い浮かぶのは1/35 MMシリーズである。今年も新製品が発売予定で、その中のひとつ7月発売予定の『ドイツ軍用サイドカーKS600』は金型技術の粋を集めた出来と言える。
ホイールやハンドル、空冷エンジンの造形が非常に緻密でありながら、思ったよりもパーツ点数が少ない。かつてのプラモデルは造形のレベルを上げるためにパーツ数を増やす必要があったが、もちろんそれでは組み上げるのに手間と時間がかかってしまう。何かと忙しい現代の大人がそうしたものを作るのは、いささか現実的ではない。
しかし今では、「パーツ数の削減」と「精巧さ」は両立する要素だ。
やや寂しい話になってしまうが、今やプラモデル愛好者の中核は中高年である。かつては「子供たちの注目イベント」だった静岡ホビーショーも、現在は「大人の集会イベント」のようになっている。可処分所得はあるが趣味にかける時間は限られる人々に向けたイベント、と言い換えるべきか。
少し前のキットよりも、遥かに作りやすくなっていることは確かである。
妄想と組み立ての同時進行ができるミリタリーモデル
ミリタリーモデル、特に戦車模型はカスタマイズの余地が極めて大きい。
この戦車はどの戦線のどの部隊に所属しているのか? 予備の履帯や工具箱はこの位置に積んでいるのではないか? もしも砂漠の戦線の部隊所属なら、足回りはこのように汚れているのではないか? エンジングリルにはこのような錆が浮いているのではないか?
そんなことを想像しながら、同時にニッパーや筆を動かせる道楽。それがミリタリーモデルづくりである。そして、そんなミリタリーモデルは誰しもが手軽に組み立てられるよう、年々進化しているのだ。
取材・文/澤田真一