静岡県静岡市で5月8~12日にかけて開催された静岡ホビーショー2024。
日本最大級のホビーの展示会で、今年目立ったのは「ミリタリーモデル」だった。金型の進化で造形が精密になると同時に、パーツの点数が少なくなるような工夫が施された新しいミリタリーモデル。これは平日日中は仕事に勤しんでいる中年男性の都合をよく考慮した設計でもある。
その上で、「もしもこの兵器にこんな装備が搭載されていたら?」という男の子なら誰しもが妄想することを具現化するキットが目立った。そんな静岡ホビーショーの雰囲気を、一部分ではあるが文章と写真で伝えていきたい。
架空の改造74式戦車が登場!
今年の静岡ホビーショーも事前登録制を導入していた。
従って、衝動的にツインメッセ静岡へ足を運んで会場へ入るということはできなかった。多くのホビー愛好者にとって、大人気の事前予約枠をどうにか掴み取りつつ静岡市まで足を運ぶ……などというのはかなりハードルの高い行為ではないか。
ただ、だからこそ開通からまだ間もない中部横断自動車道が絶大な価値を生み出すと筆者は確信しているのだが、そのあたりについては別の記事で書くことにしよう。
さて、ミラーレス一眼レフカメラを首からぶら下げた筆者がまず向かったのは、ホビージャパンのブース。『1/35 74式戦車改リアクティブアーマー(バトルオーバー北海道Ver.)』が、目立つところに展示されていた。
この製品については詳しい説明が必要だろう。劇画家の小林源文氏の作品『バトルオーバー北海道』に登場する架空改造戦車で(74式戦車自体はもちろん実在の戦車)、防御力の低さを補うためにリアクティブアーマーを外付けしているのが特徴だ。ただし、キットのほうはキット開発陣の創意工夫も加えられている。
『バトルオーバー北海道』は、90年代の日本にソビエト連邦の軍隊が侵略してくるという内容である。今のロシア連邦ではない。国旗が赤旗だった頃のソ連だ。冷戦時代、ソ連はいつ何時北海道に攻め入ってくるのか分からないと言われていた。ソ連の新型戦車は、自衛隊と模型メーカーにとっては最大の関心事。「74戦車でソ連の装甲師団に太刀打ちできるのか?」という議論もあった。
史実のソ連は経済の悪化に苦しみ、モスクワでの軍事パレードはともかくその内情は悲惨なものだった。我々現代人はそのような結果を知っているから昔のことを笑い飛ばせるが、当時は「ソ連の日本侵攻」は笑えない話だったのだ。
そして、「もしもソ連が」というifは現代においても様々な創作物を生み出している。その一つが上のキットというわけだ。いやー、それにしてもかっこいい!
妄想力爆発の四足歩行戦車
次に筆者が訪れたのは、静岡市内に本社を構える「プラモデルベンチャー」ことロケットモデルズ。
このメーカーの製品は、上の74式戦車改よりもさらに「妄想力」に満ちているのが特徴である。何と、四足歩行戦車なるものをモデル化しているのだ!
単にモデル化しているのではなく、その開発秘話や「なぜそのような技術が導入されたのか?」「その技術はどのような仕組みで稼働しているのか?」という具体的な話も設定されている。さらに、それらの兵器が存在した世界で第二次世界大戦が数年長引いたら、このような戦いが繰り広げられていた……という壮大なifも。日本軍のサイパン島逆上陸も、この世界線ではアリだ!!!
実際の旧日本陸軍は、ついに「大きな戦車」を持つことなく敗戦を迎えた。しかし、いや、だからこそ、そこに「妄想の余地」が生まれる。妄想とは創造の源であり、さまざまな製品を生み出す下地になっていることは言うまでもない。
「タイフーン作戦の成功」や「ロンメルアフリカ軍団のスエズ運河制圧戦」など、「もしも枢軸国軍が派手な大戦果を挙げていたら」という世界線を想像させる製品を、ロケットモデルズは生み出している。