2024年1月から始まった新NISAだが、世界株インデックスに連動する投資信託で積立て投資を始める人が急増しているという。
この点に関して、三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏は、「低コストの世界株インデックス投資が個人投資家にも広がってきたことは、投資に奥手だった日本人にとって特筆すべき進歩」と、好意的な反応を見せる一方で、「投資がこうした『世界株インデックス』に集中しているとしたら、気がかりな点がないワケではありません」と懸念も示す。
というわけで、今回は白木氏から届いた「『世界株一本足打法』を待ち受けるワナとその回避策」に関するリポートの概要をお伝えする。
「世界経済の成長に投資する」は本当ですか?
世界株インデックスに投資をすることで「世界経済の成長に投資できる」という解説をよく耳にする。少子高齢化が進み、自国経済の成長に自信が持てない日本人にはとても魅力的な話に聞こえるが、こうした解説は世界株インデックスの実像とは異なる「美しい誤解かもしれない」といったら言い過ぎだろうか。
世界株インデックスの国ごとの投資配分は、株式市場の時価総額の大きさにより決まる。このため、時価総額が世界でダントツ1位の米国株の組入れ比率が突出することになる。
■米国をオーバーウエイトして高成長のアジアはアンダーウエイトする世界株インデックス
足元で世界株インデックスに占める米国株のウエイトは約63.8%に上っている(2024年3月末時点)。一方、世界経済に占める米国経済のウエイト(名目GDP)は約26.8%に過ぎない(2022年末時点)。
こうして見ると、世界株インデックスは「世界経済への投資」というよりも、「米国経済への重点投資」といった方が実態に近いようだ(図表1)。
もちろん、こうした米国への集中も、米国経済の成長スピードが世界経済を上回っていれば大きな問題とはならないかもしれない。しかし、残念なことに2000年以降の約22年間の経済成長率を見ると、米国は約151%にとどまり、世界経済の同約202%を下回っている(図表2)。
近年の世界経済の成長は、主に新興国の急拡大に支えられていて、同期間の新興国経済の成長率は実に約569%に達している。中でも、中国、インド、東南アジアなどのアジア新興国の成長率は約793%に達し、「世界の成長センター」と呼ばれている。
しかし、世界経済の約29.7%を占めるアジア新興国の株式は、世界株インデックスには約7.8%しか組み入れられていない。このように、成長地域への投資がGDP比で極端に小さい世界株インデックスについて、「世界経済の成長に投資できる」とする解説は、かなり「盛った話」といえそうだ。