新型「クラウン」の第1弾、クロスオーバーが2023年7月に発売され、同年10月にはスポーツのハイブリッドが登場。続いて同年11月に「セダン再発見」というキャッチフレーズで、セダンが発売された。今回のセダンは、かつての「クラウン」シリーズの王道ともいえるパーソナル/ビジネスモデル。しかし、新型の中では4車型の中の1車種として、その存在感はかつての「クラウン」シリーズの中軸だった頃とはちょっと違ったモデルに仕上がっていた。
最近では、社用車でも「アルファード」のようなミニバンが使われるようになっている時代、セダンのポジショニングは微妙といえる。新型「クラウン」のセダンは、先代と同じくトランク部分が独立しておらず、ルーフがテールエンドまで延びているファストバックスタイルを継承している。このスタイリングは、英国のジャガーが最上級の「XJ」で2010年台に採用している伝統的なもの。英国では首相専用車にも使われた高級車の形だ。
新型「クラウン」のセダンも、堂々としている。初めて路上で見たセダンは大きかった。全長5030mmで、5mを超えている。国産車で全長が5mを超えるセダンは「センチュリー」とレクサス「LS」だけ。全幅も1890mmで「センチュリー」と「LS」に次ぐ幅の広さだ。ホイールベースも3mある。これは「アルファード/ヴェルファイア」と同じ長さだ。
パワーユニットは2種類用意されている。直4、2.5Lガソリンエンジン+モーターのハイブリッドと、水素燃料+モーターの燃料電池車(FCEV)だ。車両本体価格(税込み)は、ハイブリッド730万円、FCEVは830万円。いずれも駆動は後輪駆動の2WDだ。
試乗はハイブリッドから。運転席は、Aピラーの角度が寝かせ気味なので、やや低めにしないと、乗降時にドア開口部上縁に頭をぶつけてしまう。やや低めの着座位置だが、広いボンネットは見える。今回の「クラウン」シリーズは、スポーツもボンネットは見やすい。
室内は広く、斜め左後方を見ると遠くにCピラーが見える。リアシートは足元は広いが、ヘッドスペースは身長170cmぐらいが限界。床面中央のトンネルも高くて、幅広いので、左右1名ずつが快適定員だろう。セダンがショーファードリブンである証拠として、前席背もたれに大きなハンドグリップがあること。リアシート背もたれは、固定式でトランクと一体にはならない。トランクの中に2枚の板状のアクセサリーが入っていたが、袋から取り出して拡げると、後席用のフットレストだった。使ってみると、リラックスできるアクセサリーだった。
そのトランクは、ハイブリッド車で、左右幅は1040~1500mm、奥行きは790mmだが、高さは5200mm確保されていた。サブトランクは三角表示板が収納されていた。ドアウインドウは全開にでき、乗り心地はモード切り替えで上下動やゴツゴツ感の違いが設定されている。
ドライブモードは、カスタム/スポーツ/ノーマル/エコ/リアコンフォードの5ポジション。直進時は重い操舵力、コーナーではロールがコントロールされていた。
ハイブリッドのパワーユニットは直4、2.5Lのガソリンエンジンと、リアにリチウムイオン電池+モーター1基を搭載している。エンジンは185PS、225Nm。モーターは180PS、300Nm。4速の自動変速を備え、加速と燃費をコントロールしている。
しかし、スタートこそ軽快で2000回転前後のアクセルレスポンスもよいのだが、エンジン音がやや大きめ。アクセル・オンで、エンジンが頻繁にかかると、結構、耳障りなのだ。高級車として、エンジンコントロールをもう少し調整してほしいところだ。
燃費は高速やワインディングで、エンジン始動が多かったこともあり、9~12km/L。カタログ値の18.0km/L(WLTCモード)には届かなかった。100km/h巡航時のエンジン回転数は10速1800回転、9速2000、8速2600回転。Dレンジでの0→100km/h加速は7秒台後半なので、加速性能に不満はない。この時、直4エンジンはレッドゾーン入口の6000回転まできれいに吹け上がっていた。スポーティーな味付けのパワーユニットと言ってよいだろう。
結論として、新型「クラウン」セダンは、まだ改良の余地はあるものの、完成度の高いアッパーミドルサルーンに仕上がっている。細かい調整はマイナーチェンジ後の進化に期待したい。
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文/石川真禧照 撮影/萩原文博