今回、試乗したのは、TOM’S「GR86 TS」。「GR86」はトヨタ「GR」ブランドの4人乗り2ドアスポーツクーペで2021年に「86」のフルモデルチェンジ版として登場した。TOM’Sはモータースポーツ、中でもレースの世界ではトップクラスの実力を持つチューナーだ。創設者の1人の舘さんは1970年代にレーシングドライバーとして国内だけでなく、海外でも活躍した人物。1974年に自身のファクトリー、TOM’Sを創立。当時からトヨタとの関係は深く、トヨタ車をベースにしたチューニングカーは、現在でもトヨタのディーラーで販売されている、公認のチューニング&ドレスアップカーメーカーだ。
公道での走りを重視したチューニングカー
海外では、メルセデスベンツのAMG、BMWのアルピナ、ポルシェのRUFなどメーカー公認のチューナーがあるが、日本では数少ない存在。それだけに手がけるクルマも、街のショップチューナーとは、信頼性も段違いの仕上がりだ。「GR86 TS」は、レース用ではなく、公道でいかに楽しく、小気味よく、もちろん速く走ることができるかを重視したチューニングカー。ベース車両「GR86」の基本仕様は変えずに、TOM’Sがチューンしている。
エンジン関係では、エキゾーストシステムを独自に設計。ノーマルの直4、水平対抗2.4Lエンジンの特性を生かし、向上させるためにセンターパイプにチャンバー構造を採用し、低回転域から高回転域までよどみなく吹き上がる性格にしている。
エンジンだけでなく、ボディーの構造やサスペンションなどのチューニングというのは、基本のクルマの完成度が高いほど、チューニングの領域は狭く、ハイレベルになる。当然、そこには素材や品質をノーマル以上に高めるための努力が必要になってくる。メーカー公認のチューナーだからこその苦労があるに違いない。
足回りでは、アーム、ブッシュ類の見直しと減衰力20段階調整の全長調整式ダンパーと専用スプリングが新しくなっている。LSDはコントロール性を重視した1.5way専用セッティングのLSDを装備。足回りの温度が下がっているときの低速時にハンドルを切るとゴツゴツという抵抗を感じるところは、快適性より操縦性重視のセッティングを意識させる。
ボディーはフロントとサイドのデュフューザー、リアバンパーサイドフィン、トランクリッドスポイラーを独自に開発し、装着している。このボディーパーツも、TOM’Sが2023年シーズンの国内スーパーフォーミュラとGT選手権の双方でチャンピオンを獲得したマシンづくりの実績から、レーシーな世界での空力ノウハウが生かされているはずだ。
そのスタッフがチョイスしたタイヤ/ホイールは18インチ8.0J+47の鍛造アルミホイール「TWF04」。タイヤは前215/40R18、後225/40R18のブリヂストン「ポテンザRE-71RS」を装着している。