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分散投資先としてみるグローバル・リート市場、日本の独自要因に再評価の動き

2024.05.21

日本は利上げ開始に舵を切る中、独自要因による再評価の動きへ

日本のリート市場について、約7年続いたマイナス金利政策を解除した日銀が、今後も利上げを段階的に実施するとの見方が上値を抑制している一因と考えられる。一般的に金利上昇局面はリート市場に逆風とされるが、直近の日本の10年国債利回りは1%程度の水準にとどまっており、債券市場においては緩和的な金融環境が続くことが示唆されているようにみえる。

賃上げと物価上昇の好循環が期待される日本株は、コロナ禍以降の株価上昇により、東証株価指数(TOPIX)が19年3月末比で約7割高い水準にある(図表6)。また、先行きの金利上昇が警戒されて低迷していたTOPIX不動産業指数は、デフレ脱却や資本効率改善に向けた前向きな取り組みが評価され、23年3月以降に大きく上昇し、日本のリート市場の出遅れが目立っている。

日本のリート市場を用途別にみると、主力の一つである「オフィス」の戻りの鈍さが、指数全体の重石となっていることが考えられる(図表7)。コロナ禍以降、テレワークの普及によってオフィスの賃貸需要の低迷が長期化するとの懸念や、先行きのオフィス供給増が意識されているようだ。

一方で、インフレヘッジの需要先として評価された「住宅」や、円安やインバウンド需要の拡大の恩恵を受けるホテル関連やEC需要の成長で需要の強い物流施設関連が含まれる「商業・物流等」は、相対的に堅調に推移するなど、セクターを選別する動きがみられる。

24年3月に公表された公示地価(24年1月1日時点)は、全国全用途で3年連続の上昇、伸び率は前年比+2.3%と33年ぶりの高水準を記録するなど、日本全体の不動産市場の改善が続いている点は、日本のリート市場にとって前向きな動きと言えるだろう。

先行きが懸念されていたオフィスビル市況も、足元で改善の兆しがみられる。2024年4月の東京都心5区のオフィス空室率は5.38%へ低下し、貸し手が優位とされる5%割れが視野に入りつつある(図表8)。オフィス平均賃料は20年7月をピークに下落基調にあったが、直近では前月比で若干ながらも上昇に転じている。25年には再びオフィスビルの供給増が見込まれる一方、日本経済のデフレ脱却やオフィス出社率の上昇、多様化するワークスタイルに対応できる好立地・ハイグレードの大型物件に対する需要が支えとなりそうだ。

■日本のリート市場では独自の改善要因をチェック

日本のリート市場を取り巻くファンダメンタルズ(基礎的条件)は改善傾向にある中、バリュエーション面では割安な水準にあると考えられる。株式で広く利用されるバリュエーション指標である株価純資産倍率(PBR)に対し、日本のリートでは鑑定評価の時価をベースとした保有不動産の純資産額に対する時価総額の倍率(NAV倍率)が用いられることが一般的だ。不動産証券化協会のデータによれば、東証リート指数の2024年4月末時点のNAV倍率は0.89倍となり、過去10年平均(1.14倍)および解散価値とされる1倍を下回るディスカウント状態にあると試算された(図表9)。

日本の株式市場においては、23年3月に東京証券取引所(東証)が全上場企業に対して「資本効率や株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請し、いわゆる「低PBR企業」の行動変容への期待や自社株買いの増加などが株価上昇を支えたとみられる。

日本のリート市場においても、NAV倍率が1倍を下回る銘柄を中心に、自己投資口取得を公表する動きが加速している。2024年に入り、計6件の自己投資口取得の決定が公表され、その総額(上限金額の合計)は、4月末時点で280億円と年間ベースの過去最高を既に更新した(図表10)。

前述の通とおり、ファンダメンタルズが改善傾向にある一方で、東証リート指数は23年以降NAV倍率1倍割れの状態が続いており、今後も資本効率の向上や投資主還元を目的としたアクションが、日本のリート市場の下支えとなるだろう。

日本のリート市場は売買需給面での前向きな変化が見込めそうだ。東証リートの投資部門別の累積売買金額を確認すると、変化の兆しが見える。2021年以降、「海外投資家」が買い越し、金融機関や投資信託など「法人」、「個人」が売り越しの傾向にあったが、日銀によるマイナス金利政策の解除が実施された204年3月と4月にかけて、2か月連続で3部門が揃っての買い越しとなった(図表11)。

利回りスプレッドやNAV倍率といったバリュエーション面での割安感が見直され、売買需給面での前向きな改善を通じて、日本のリート市場は再評価される余地がありそうだ。

好調が続く世界株式に対し、分散投資先としての日本リートに注目

米国や日本などのグローバル株式は好調に推移しているが、それに対するグローバル・リートの相対的な出遅れ感が目立っている(図表12)。コロナ禍以降の経済再開とともに、インフレ率の上昇に応じた主要中銀の断続的な利上げを受け、金利が上昇(債券価格が下落)傾向にあったことが、グローバル・リートの上値の重さにつながったと考えられる。

グローバル・リートの見通しについて、今後は底堅さを増すと考えられる。日本を除く主要国においては、景気とインフレ減速を受けた欧米中銀の次の一手が利下げと想定されるため、大きな流れとしては、金利はピークアウトから2024年末に向けて緩やかな低下が見込まれることがサポート要因となりそうだ。

一方、日本においては、賃上げと物価上昇の好循環入りを確認し、日銀が24年中に利上げを実施すると想定されるが、その後の利上げペースは緩やかとなり、相対的に緩和的な金融環境が続くと見込まれること、自己投資口取得など売買需給面での改善が支えとなり、底堅い推移を想定する。

好調続く株式に対して出遅れ感のあるリートは、一般的に、相対的に高いインカムゲイン(配当収入)が投資魅力の一つとされ、注目される。

分散投資先としてのグローバル・リート市場の中でも、日本リート市場への投資について、検討の余地がありそうだ。近年は世界株式インデックスなど海外資産への投資が選好されているが、米欧中銀と日銀の金融政策の異なる方向性(米欧は利下げ、日本は利上げ)に焦点が当たり、内外金利差の縮小とともに円安傾向が反転するリスクにも気配りが必要かもしれない。

国内資産が中心の日本リートと、グローバル株式や米ドル円との相関性は比較的低く、直近では低下傾向にあることが確認できる。グローバル・リートの中でも日本リートは、期待リターンの改善や好調が続くグローバル株式との低い相関性に着目する価値はあるだろう。

関連情報
http://www.smd-am.co.jp

構成/清水眞希

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