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【世界はうまいで満ちている】肉の旨味が凝縮されたオーストラリアの絶品B級グルメ「ソーセージロール」

2024.05.19

「絶品B級グルメ」とか「ソウルフード」と呼ばれるものは日本全国にある。で、みなさんはこう考えたことはないだろうか。「日本各地にあるんだったら世界各地にも当然B級だけど超絶うまいものがあるんじゃないか?」と。

というわけで世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」が、居住国や旅先で出会った「絶品ソウルフード」を大紹介するシリーズ。第1回は「オージービーフ」の国オーストラリアから「ソーセージロール」をお届けする。

「おいおい、ソーセージって普通ポークだろ~」という鋭い指摘を入れた方、まあ最後まで読んでいただきたい。

こちらが今回紹介する「ソーセージロール」。半分に切った断面。あまりソーセージ感がないのだが……その秘密はまたあとで。

オージービーフの国だもの。ソーセージも……

オーストラリアの代表的な食材としておそらく真っ先に思い浮かべられるのは「オージービーフ」だろう。代表的すぎて「それしかない」と思われることもしばしばだが、それもあながち思い過ごしとは言えない。

なにせ今回紹介する「ソーセージロール」はそんな牛肉を使った絶品B級グルメなのだから。

そう、日本ではソーセージと言えば真っ先にポークを思い浮かべるだろうが、オーストラリアではまずビーフ。もちろんポークやチキン、そして外国人観光客を主なターゲットにするようなレストランではこの国の代表的な動物であるカンガルーやエミュー(ダチョウに似た巨大な鳥)、ワニ(クロコダイル)のものを味見させるところもあるが、基本はビーフなのである。

バーベキューでも一番の定番は「ビーフソーセージ」だ。

さらにオーストラリアのソーセージは日本のウインナーや粗挽きソーセージと「密度」が異なる。日本のものは「肉がみっちりぎゅうぎゅう詰め」。アメリカのホットドックソーセージもこのパターンだろう。一方オーストラリアのものは「ひき肉を薄皮で包んだ」という感じで食感ももっと「ほろほろ」に近い感じ。「ハンバーグを細長い薄皮につつんだ」と表現すればわかりやすいかもしれない。

ソーセージにベーコンや焼きトマト、ハッシュブラウンなどを添えた「ビックブレッキー」も、休日ブランチの定番だ。ちなみに「ブレッキー」とは「ブレックファースト」の略。

「ビーフソーセージ」&「パイ生地」の絶妙ハーモニー

そのひき肉感たっぷりのビーフソーセージを、なんと「パイ生地」で包んだのが今回紹介する「ソーセージロール」である。

見た目は残念ながら「何の変哲もない」感が半端ない。

同じ「ソーセージを小麦粉で包んだもの」だが、ホットドッグとも、総菜パンのソーセージパンとは食感がまったく異なる。パイ生地だから外はサクサク、ひき肉だから中はジューシー。つまりサクサク&ジューシー。軽さと濃厚さの「食感コントラスト」が絶品だ。

そしてパイ生地で用いられるバターのほんのりした甘さと、ソーセージのひき肉がジュワッとにじみ出てくるしょっぱい系のうまみの「味わいコントラスト」も最高なのである。

そのまま食べても充分おいしい。だがトマトケチャップをつけて味わう人もかなりいる。オーストラリアに移住して25年、つまりソーセージロールを食べ続けて25年の筆者のオススメの食べ方はズバリ、「最初はそのまま、途中からトマトケチャップをつけて」という「味変パターン」である。

ぜひ「味変」も楽しんで! ちなみにマックナゲットなどでおなじみの「バーベキューソース」で味変する人もいる。

また味のバラエティーもある。ビーフソーセージだけの「オリジナル」、「チーズ&ベーコン入り」やピリ辛唐辛子の「ハラペーニョ入り」などの店によってさまざまだ。「オリジナル」のいわゆる「肉々しい」うまさはまさに王道。「チーズ&ベーコン入り」はそこに「濃厚」が加わる。「ハラペーニョ入り」はその刺激がひき肉とパイ生地の甘じょっばさと絶妙なハーモニーを醸し出して絶品。どれもおすすめなので、お好みで試していただきたい。

ちなみにこの「ソーセージロール」の起源は、オーストラリアの旧宗主国である英国だという。

コスパも最高、時短もできる「コンビニ飯」

さて気になるのは大きさだろう。物にもよるが今回改めて実測してみたものは、長さは約18センチメートルで幅は5センチメートル。切り口は蒲鉾のような楕円に近い形だ。

小さなソーセージロールだが、意外と腹持ちも……。

さて、それを何本くらい食べればおなか一杯になるのか。見た目が菓子パン風なので数本必要と思われるかもしれないが、よほどの大食漢でなければランチはこれ1本で充分だと思う。肉がぎっしりだし、パイ生地もバターがたっぷりなので、見た目よりもずっと腹持ちがいいのだ。

それでいてお値段は日本円にして500円前後(1豪ドル=100円で計算。2024年5月時点。以下同じ)。今回コンビニで買ったものは450円と高くない。物価が日本よりもずっと高いオーストラリアではビッグマックが約750円で、セットにすれば大台を超える。フードコートで比較的安価でおいしいと評判のカツカレー丼でも1000円を超える今、この安さは正義である。

さてこの「ソーセージロール」、いったいどこで手に入るのか? スーパーマーケットや精肉店の冷蔵品コーナーにもあるが、当然オーブンで温めなければいけない。旅行で来られた方が手に入れやすいのは「パン屋さん」。また「コンビニ」では個包装のものが温められて売られていることも多い。ちょうど日本のコンビニの「あんまん・肉まん」に近いが、季節は関係なく一年中扱われている。

ホットドッグとも日本の総菜パンともまったく異なる「ソーセージパン系」の知られざる逸品。ぜひお試しあれ。

世界は「うまい」で満ちている。

文/柳沢有紀夫

世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住

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