※こちらの原稿は雑誌DIME6月号(4月16日発売)に掲載されたものです。
先日、漫画家の鳥山明さんが亡くなられました。あまりなんでも若すぎますね。日本のみならず世界中が追悼した一日でした。というのもその日、私、グアムにいたんですね。そこでタクシードライバーとドラゴンボールの話になりましたし、ホテルのバーテンとも好きなドラゴンボールのキャラクターの話になりました。バーテンの男の子は見るから20代でしたがキャラクター名に詳しく、英語でのアニメや漫画を読んでいるとのことでした(ちなみにピッコロが好きらしいです)。確かに、私もいろいろな外国に行きましたがジャパニーズアニメが好きだ、という人に作品名を聞くと『ドラゴンボール』か『NARUTO −ナルト−』、この2強が頭抜けていました。少し前、テレビで20代が「ドラゴンボールで例えられてもわからない」みたいなことを言っていましたが、それはきっとその人がただ勉強不足なだけでしょう!
2024年秋から6年ぶり新テレビシリーズ『ドラゴンボールDAIMA』がスタート。©バード・スタジオ/集英社・東映アニメーション
鳥山先生が拓いた〝性の目覚め〟
さて、鳥山先生の作品のすばらしさはあちこちのメディアで語られているのでここでは私の思い出補正込みで、鳥山先生が拓いた〝性の目覚め〟について語ろうと思います。『ドラゴンボール』、そして『ドラゴンボールZ』が放送されていた当時、私はしっかりと小学生でした。諸先輩がかつて『キューティーハニー』や『いけない!ルナ先生』で性の目覚めを経験したようにはエロに対しての締め付けが厳しくなっていたと感じる1990年代、しかし我々世代は鳥山先生の作品で目覚めた人は少なくないと思うんです。
そもそもギャグ漫画『Dr.スランプ』から始まった鳥山先生、ドラゴンボールも冒険活劇とはいえギャグ漫画ではあるんですよね。そこで出てくるのが、ちょいエロ。だって少年誌ですもの。とはいえ、いまだに鮮明に覚えているのが、パンティー丸出しで寝ているブルマに近づく幼少期の孫悟空。もっこりしていないことに疑問を持ち、枕にしてみるも違和感。そこでパンティーを脱がして「じっちゃんみたいなタマタマがねえー!」と絶叫するんですね。そこで飛び起きたブルマが「タマタマがない=ドラゴンボールがなくなった」と勘違いしてバッグを確認する、というドタバタなのですが。うん、目覚めた。女性の胸を描くコンテンツは数あれど、下半身をネタにするものを初めて見た私はドキドキです。
その後、亀仙人にパンティーを見せてあげるというブルマが実はノーパンで、というエピソードやウーロンの「ギャルのパンティーおくれ」という名言もあったり下半身ネタは多めなのですが、その後『ドラゴンボールZ』になってからはギャグ要素が減ったこともあり、直接的な描写は減りました。とはいえ孫悟空をはじめとしたサイヤ人の筋骨隆々な肉体美、人造人間18号というミューズ爆誕、そしてそんな18号らを吸収する、というセルの存在、いつの間にか子づくりしていた悟空とチチやベジータとブルマなど、恒常的に「性」は存在していたと思います。
さらに同時期の鳥山作品でキッズの性をこじ開けたのは『ドラゴンクエスト』ではないでしょうか。女性で言えば3に出てくるビキニスーツの女戦士、4のマーニャ・ミネア姉妹のビジュアルは健康的かつセクシーでした。男性で言えば4の主人公はフランス映画のような美青年ですし、5の主人公の筋肉質かつ甘いマスクは多くの目覚めを生んだと思います。画力があまりにすごいので性を排除しただろうはずのものすら性的に映す鳥山作品よ。
日本中そして世界中の人が虜になり、多分かなりの数の性の目覚めを背負ってきた鳥山先生。どうぞ安らかにお休みください。そして生きている我々はこの巨大IPを世界で戦う武器として大切に育て続けましょう。おかしな実写化以外の方法でね!
文/ヒャダイン
ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME6月号に掲載されたものです。