親子の風貌が似ているのは当然だとも思われているが、性格や考え方のほうもやはり似てくるのだろうか。驚くことに最新の研究では、パーソナリティーの面で親と子は“ほとんど他人”であることが示唆されている。
親と子は性格面では“ほとんど他人”
心理学における「ビッグファイブ」は、性格特性においてそれぞれ「開放性(Openness)」、「誠実性(Conscientiousness)」、「外向性(Extraversion)」、「協調性(Agreeableness)」、「神経症的傾向(Neuroticism)」の5つの因子から性格特性を浮き彫りにする理論である。
このビッグファイブの性格特性は、現在の心理学で最もよく受け入れられ、最も一般的に使用されている性格モデルでもある。
「血は争えない」や「蛙の子は蛙」など、子が親から気質や性向を受け継いでいることを示す表現はほとどんどの文化にあるといわれているが、このビッグファイブで親と子の性格特性を検証してみるとどうなるのか。パーソナリティーの面でもやはり親子は似ているのだろうか。
この疑問に答えるために、英エディンバラ大学をはじめとする研究チームがエストニアのタルトゥ大学の専門家と協力して、エストニアのバイオバンクから1000組以上の親族を募集し、開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症的傾向といった「ビッグファイブ」の特性と、人生の満足度についての詳しい調査分析を行い、今年4月に「PsyArXiv」で発表した。
収集したデータを分析した結果、性格特性と人生の満足度が遺伝する確率は約40%であることが突き止められた。ちなみにまったくの他人と一致する可能性は25%である。
別のシナリオでは、特定の性格特性が程度によって3分類されたが、分析の結果、各性格特性において子供が親と同じ分類に属する可能性は39%であることが明らかになった。まったくの他人と同じ分類に属する可能性は33%であることから、親子は他人よりもわずかに似てはいるものの、このビッグファイブによる性格特性診断では親と子は“ほとんど他人”ということになる。
言い換えれば60%以上の子供は、いかなる性格特性においても親とは異なるグループに属しているのだ。
研究チームによれば、性格特性がまったく遺伝しないわけではないが、親の性格特性から子供の性格特性を正確に予測することは不可能であると結論づけている。
父親似か母親似かは分かれるものの、親子の風貌がどことなく似ているのは多くのケースで納得できると思うが、性格特性に関しては“ほとんど他人”であったとしてもおかしくないということになる。時に最後まで分かり合えない親子がいたとしても決して珍しくはないのかもしれない。