アホケータイ
今やスマートフォン1つであらゆる情報が手軽に得られる時代になった。一方で、過多な情報に疲れた人向けに「アホケータイ(Dumb Phone)」が海外で人気を集めているとスマートフォン評論家の新田ヒカルさんは語る。
「昔のガラケーのように、電話やメールなど一部機能のみに限定されたモバイル端末を指します。操作が苦手な人や特定の用途向けだった従来の製品と異なり、アホケータイはファッション性が高く、あえてシンプルで限定的な使用感を楽しむコンセプトが特徴です」
背景にはSNS断ち、レトロブームなど様々な要因があるようだ。
「市場の成熟で生じた『新しい刺激が欲しい』という需要の一事例だと考えています。不便さを楽しむ目的やSNS断ちで時間を有効活用する用途はもちろん、自己満足としての側面もあるでしょう」
今は海外を中心としたムーブメントだが、日本では未発売だが、同様の流れは起こるのだろうか。
「若い世代を中心にSNS疲れは起きています。ブランド戦略次第ですが、サブ端末などでの需要は十分見込めます」
情報化社会を〝賢く〟生き抜く選択肢として、アホケータイは役に立ちそうだ。
不便さやシンプルさをステータスとして楽しむアホケータイは、フィルムカメラやガラスペンブームと似ている。ミニマルなライフスタイルの一環として新たな市場を築けるか。
アメリカで販売されている『Light Phone II』はディスプレイが白黒の電子ペーパー。有名ラッパーとコラボした限定モデルが2023年末に発売され、即日完売した。
SHIBUYA109 lab.の15〜24歳を対象にしたスマートフォン意識調査では、およそ半数がSNS疲れを感じ、3割ほどがSNSを辞めたいと回答した。
取材・文/桑元康平