JISの照明基準をクリアしつつ直管の蛍光ランプから切り替えると電気代は最大61.3%をカット
「メリハリ照明」は、従業員の心理的なメリットをもたらすだけでなく、電気代の削減という経営的な利点もある。
従来のオフィスは、作業内容に応じた机上の明るさを、JIS照明基準や厚生労働省の労働衛生基準などによって制定。レイアウトが変わっても机上の明るさを確保するために、部屋全体を均一に明るくしていた。
しかし、照明機器が進化した影響により、机上の明るさの基準を守りながら、通路などの明るさを抑えることで、電気代を大幅にカットできるようになってきている。
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社の瀧さんによれば「10年ほど前にLED照明にしていた株式会社エスエー防災様(中小規模オフィス)の場合、同じLEDでも、通常の使い方から「メリハリ照明」に切り替えたところ、電気代は31.3%削減になりました」。なお、従来の蛍光ランプを使っている同様の中小規模オフィスの場合は「メリハリ照明」に切り替えることで、最大61.3%の削減も見込めるそうだ。
株式会社エスエー防災(中小規模オフィス)での電気代削減実績
これまで政府が行なっていた電気代・ガス代の負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は、2024年5月利用分をもって打ち切られた。つまり、今後、電気代が高騰するのは必至であり、今のところ安くなる要因が見えない。照明器具を取り換えるだけで、LEDからでも電気代を大幅に節約できる「メリハリ照明」は、前述の電気代削減率からわかるように、経営面でも大きなメリットをもたらすだろう。
なお、2024年5月利用分を持って打ち切られた電気代・ガス代の負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」。これからは利用者が値上げ分をすべて負担しなければならない。
また、特にZ世代に対して「こんなオフィスで働きたい」という好印象を得やすいということで〝求人の武器〟にもなるという。さらに従業員の働きやすさ改革にもつながるのが、先の言葉からもおわかりいただけるだろう。詳細は後述するが、レイアウト変更による照明の再施工も施工会社に頼ることなく、自由に配光できる点も見逃せない。企業を支える「人」「モノ」「お金」に影響をもたらすのが「メリハリ照明」なのだ。
レイアウト変更対応する高い自由度と工事費もほぼかからない汎用性も魅力
一般的なオフィスの照明は、天井に穴を開け、照明器具を埋め込むなり、天井を抜きボルトで吊り下げるなりして、照明器具を設置する。そのため、オフィス内のレイアウト変更があった場合、JIS照明基準や労働衛生基準に適合しなければ、電気に加えて天井の工事も必要だ。
一方「ダクトレール」と呼ばれるベースを天井に設置する「メリハリ照明」の場合、照明の位置を動かしたり、個別に取り換えたりするのが実に簡単だ。
■レイアウト変更に合わせた、ダクトレールに設置する照明の組み合わせ例
●コワークスペース
●会議スペース
●打ち合わせスペース
これまで数多くのオフィスや公共施設などの照明を手がけてきたパナソニックは、ダクトレールで高いシェアを持つ。様々な「ダクトレール」を用意し、既存の照明機器の取り付け穴を再利用できるものから、埋め込み穴のない天井にも取り付けられるものまで、品揃えは豊富。対応する照明器具についても、デザインや色はもちろん、明るさ、光の色、光を照射する範囲などの違いにあるものを、幅広く用意している。
天井埋込の照明器具の穴を再利用できるダクトレール。左がダクトレール施工前、右がダクトレール施工後
埋め込み穴がない場合のダクトレール。机上を照らすペンダントライトが、カジュアルな空間を演出している
〝ボルト吊り〟にも対応できるダクトレールも用意。配管剥きだしでよりカフェっぽい演出ができる
ダクトレールに取り付ける照明器具の多くは、半回転させると器具のロック・アンロックできる。ダクトレールから電源を取るので、電気工事の免許不要で個別の照明器具を移設したり交換したりできるのも助かるだろう「メリハリ照明」を導入すれば、レイアウト変更の際に必要だった、電気・内装の施工工賃も大幅に節約できるのだ。
パナソニックなら照明だけでなく総合的な環境構築が可能
「メリハリ照明」のベースとなる「ダクトレール」に取り付ける機器として、パナソニックでは照明以外にも用意している。例えば、天井から引っ張るコンセント、休憩スペースなどに導入するワイヤレススピーカー、匂いや空気の質が気になる場合はナノイー発生装置なども、ダクトレールに取付け可能だ。
ダクトレール用無線スピーカー。休憩スペースなどに取り付けるのがおすすめだ。例えば、スマホ経由で、自然の環境音やBGMなどの音源を流せる
ダクトレールに付けられるナノイー発生装置。キレイな空気やにおいが気になる空間向け
業務の集中力が高まり、電気代を大幅に削減でき、しかもカスタマイズできる「メリハリ照明」。導入を検討したい場合は、オフィスの工事会社または設計事務所に相談するといい。ダクトレールの最適な設置位置や豊富にある照明機器からどれを選べばいいか迷う場合は、相談時にショールームの見学希望も伝えると、全国各地にある照明のショールームで「実際どのような光の広がりか?」「明るさは?」といったことをチェックでき、各種の施工例が見られるのでイメージも掴みやすくなる。
2027年末には一般照明用蛍光ランプが入手しにくくなることを考慮し、特に直管の蛍光ランプを使っている職場のビジネスパーソンは「メリハリ照明」への切り替えを前向きに検討してほしい。
取材・文/藤山哲人 編集/田尻健二郎