電通と電通デジタルは、国立大学法人東京大学次世代知能科学研究センター(以下「東京大学AIセンター」)と共同で行なっている「AIとの協働による人の創造性の拡張」に関する研究成果の一部を、2024年5月28日から開催される人工知能学会全国大会で発表するとともにブース展示を実施する。
テーマはAI活用における「人の創造性の拡張」と「広告クリエイティブの効果最大化」
第4次AIブームが到来し、AIのビジネス活用はスタンダードになりつつある。AIを活用した業務効率化についての研究はますます加速する一方で、新たなアイデアを生み出し、人の心を動かすような創造性を拡張・変革するためのAI活用に関する研究は十分に進んでいない状況だ。
そんな中、同社は、これまでも広告クリエイティブにおけるAIソリューション開発に先駆的に取り組み、2022年には、グループ横断組織である電通クリエイティブインテリジェンスを発足。東京大学AIセンターとともに研究に取り組んできた。
今回の発表では、AI活用における「人の創造性の拡張」と「広告クリエイティブの効果最大化」をテーマに、人とAIの協働可能性に関する研究を行なっている。
具体的には、以下の2つの研究成果をまとめたものになる。
■1.アイデアを必要とする職業におけるひらめきの瞬間の記録と分析
本研究では、アイデア創出を専門とする職業(※)を対象に、独自開発したアプリケーションを配布。ひらめきの瞬間に関する情報(日時・場所・シーン・アイデアの内容・ひらめいた直前の行動・アイデアの規模など)を記録・データベース化し、ひらめきの傾向を分析した。
※グラフィックデザイナー、ファッション関係者、プロデューサー、コピーライター、CM プランナー、音楽関係者など。
その結果、特定の要素がアイデア生成のパフォーマンス向上に寄与することが示された。今後の研究では、収集したデータを基に、機械学習アルゴリズムを適用し、さまざまなクリエイターがアイデアをひらめきやすくなるような介入メソッドの開発を目指す。
■2.コピーライターの思考プロセスを用いたFine-Tuning手法の提案および評価実験
本研究では、プロのコピーライターを対象に、コピーライティングという創造的タスクにおけるGPT-3.5 Turboモデル(※6)(Supervised Fine-Tuning )(※7)利用の有効性と「心をうごかすコピー」の評価手法(※8)の確立までを検証した。
※5 グラフィックデザイナー、ファッション関係者、プロデューサー、コピーライター、CM プランナー、音楽関係者など。
※6 OpenAI社が開発した言語モデル。
※7 ある教師データセットを使って事前学習した訓練済みモデルの一部もしくは全体を、別の教師データセットを使って
再トレーニングすること。
【A】GPT-4モデルと、【B】コピーライターの思考によりFine-TuningしたGPT-3.5 Turboモデルの2種類を使用して、コピーライターがコピーを作成し、評価を行なった。
その結果、条件付きではあるが、Fine-Tuningされていない【A】を使用した場合、コピーライターのみでコピーを作成するよりもコピーの品質は低下し、【B】を使うと品質が向上する傾向が見られた。
この結果から、コピーライターの思考をAIに教え込むことでコピーの評価が左右される可能性が示された。
今後の研究では、大規模言語モデルの適切な条件や使い方を引き続き調査して、コピーライティングという創造的なタスクにおける人とAIの協働を促進。双方が有機的に発展するための判断材料を導き出すことを目指すという。
<ひらめき発生時の全体傾向>
図1:ひらめきシーン別
図2:ひらめき曜日別
<各グループ総合評価値平均比較 >
同社はこれまでも、AIコピーライターや顧客体験(CX)の自動化など、多くのAIソリューション開発実績を築いてきた。
今回の結果については「本研究の成果を活かし、クリエイティビティの源泉を紐解くことで、さらなるAIソリューションの進化を推し進め、これまでにない新たな広告手法の研究・開発を進めていきます」とコメントしている。
【発表論文】
1.アイデアを必要とする職業における閃きの瞬間の記録と分析
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/3E1-GS-10-04/advanced
2.コピーライターの思考プロセスを用いたFine-Tuning手法の提案および評価実験
https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2024/subject/2G1-GS-11-02/advanced
◎発表論文の閲覧には、人工知能学会全国大会開催前~会期中(〜5月31日)は当該大会への参加者登録、ならびにログインが必要です。また、当該大会開催後の7月初旬頃からJ-STAGEの「人工知能学会全国大会論文集」ページ(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/pjsai/-char/ja)にて、どなたでも閲覧が可能。
関連情報
https://www.dentsu.co.jp/news/business/2024/0513-010723.html
構成/清水眞希