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金融業界をはじめとして、ビジネスの現場では「プロパー」という言葉を耳にすることがあります。
「プロパー」とは、そもそもどのような意味の言葉なのでしょうか。用語の意味とビジネスシーンでの使い方、業界ごとの違いを中心に紹介します。
「プロパー」とは?本来の意味とビジネスにおける意味
「プロパー」という用語が持っている本来の意味と、ビジネスシーンで使われるときの意味を紹介します。
業界やシーンによって意味するものが異なるケースがあるため、ここで詳しくチェックしておきましょう。
■「正規」という意味を持つ言葉
語源は、「適切な」「正しい」「本来の」「正規の」という意味を持つ英語の形容詞「proper」です。「完全な」を意味する副詞として用いることもあります。
「proper」は、ラテン語の「proprius」からできた言葉です。「proprius」は、「自分の」「特有の」という意味を持つ単語です。
日本語では上記の意味に加えて、「適正な」や「専門家」という意味で用いられることもあります。使用されるシーンによって意味が異なるケースもあるため、注意が必要です。
■ビジネスにおける「プロパー」の意味
ビジネスシーンにおいて、「プロパー」はそのあとに単語をつけてさまざまな意味で用いられます。代表的な意味は以下の通りです。
- プロパー社員:直接雇用の社員、正規雇用の社員、新卒入社の社員(企業によって意味が異なる)
- プロパー価格:正規価格
- プロパーカード:企業が独自に発行しているクレジットカード
- プロパー投資:金融機関が直接実施する投資
ひと言で「プロパー」といっても、どのようなシーンで用いられるかによって意味が異なるため、複数のニュアンスを正しく理解する必要があります。
「プロパー社員」とは?
続いては、ビジネスシーンでよく使われる「プロパー社員」の意味を深掘りしていきます。
「プロパー社員」は、前述の通り正社員、特に新卒入社の正社員のことを指して使われる場合が多いです。
会社にずっと在籍していた経験から、社内における知識が豊富で、帰属意識が高いなどの共通点が見られるでしょう。仕事における過去の経緯などを知りたい時に、頼れる存在です。
■「プロパー社員」の特徴
こうした人材は、具体的にどのような特徴を持つでしょうか。代表的な特徴を二つ紹介します。
・人脈があり社内情報に精通している
プロパー社員は勤務先の企業と直接雇用契約を締結していて、他タイプの社員と比較して長期間同じ企業で働いている傾向があります。そのため、社内の人脈が豊富で、さまざまな情報を知っているのが一般的です。
人脈が豊富であることは、社内のコミュニケーションをスムーズに促し、チームを超えて連携しやすくすることを意味します。ビジネスを円滑に進める上で欠かせない存在といえるでしょう。
自社のビジネススタイルや将来のビジョン、事業戦略について深く理解しているのも、「プロパー社員」の特徴です。
・給料が高く昇格しやすい
自社のやり方を熟知していて成果を出しやすく、昇給・昇進しやすいのも「プロパー社員」の特徴です。長く働いていれば自社のやり方だけでなく、業界や取引先の情報もある程度知っているのが通常といえます。
そのため、どのようにすればより高い成果が出るか、自社のビジネスを成長させるには何をすればよいかを考えて業務を実行しやすいでしょう。継続的に高い成果を出し続ければ、昇給や昇進にも期待できます。
ただし、あくまでも傾向の一つといえるもので、「プロパー社員」であるからといって昇給・昇進が確実であるとは限りません。
■「プロパー社員」が抱える課題
企業ではさまざまなタイプの社員が働いています。その中で、プロパー社員にはどのような傾向があるのでしょうか。一般的な傾向の例を紹介します。
・保守的・閉鎖的な傾向がある
一つの企業で長期間働き続けている「プロパー社員」は、保守的・閉鎖的な考えを持っている傾向があります。他の企業で働いた経験がなければ、さまざまな考えややり方に触れる機会が少なくなり、保守的な考えを持ちがちです。
そのため、経験者採用や非正規雇用で新たに入ってきた社員と「プロパー社員」との間に、何らかの壁ができてしまうこともあります。プロパー社員が多いチームが閉鎖的な環境になると、必要なノウハウが共有されなかったり業務が属人化したりするリスクもあるため注意が必要です。
・「プロパー社員」との壁をなくすには
「プロパー社員」に保守的・閉鎖的な考えがあると、経験者採用や非正規雇用の社員との間に摩擦が生じて、ビジネスをスムーズに進められなくなる場合があります。
良好な職場環境を構築するには、「プロパー社員」とその他の社員が協力することが欠かせません。協力して働ける環境にするには、以下のような取り組みが有効です。
- 定期的にイベントを開催して社員同士が交流できるようにする
- 「プロパー社員」とその他の社員が混在するようにチームを編成する
- 社員の属性を問わず公平に評価する人事評価制度を用意する
- 各チームのノウハウを積極的に他のチームに公開する
企業・チームによってどの方法が適しているか異なるため、可能なところから始めるとよいでしょう。
業界別の「プロパー」の使い方
「プロパー社員」のような使い方以外にも「プロパー」にはさまざまな意味があり、それは業界によって異なります。
以下では代表的な業界として、「小売・流通業界」「金融業界」「アパレル業界」「IT業界」それぞれの使い方を見ていきましょう。
■小売・流通業界
正規のルートで流通して取引される商品を、「プロパー商品」と呼びます。メーカーから卸売業者を経由して小売業者に引き渡され、その後店舗で販売されるルートを指すのが一般的です。
ただし、メーカーや商品によっては正規の流通ルートが異なり、直販店や正規販売店を経由して流通するケースもあります。いずれの場合でも、メーカーが定めるルートで流通する商品の総称が「プロパー商品」です。
アウトレットや並行輸入品など、別のルートで流通する商品は「プロパー商品」ではありません。
■金融業界
金融業界においては、銀行などの金融機関が単独で実行する融資を「プロパー融資」と呼びます。事業向けの融資手法として用いられており、信用保証協会の保証を受けずに融資するのが特徴です。
融資を受ける企業にとっては、保証料を支払わなくてよいというメリットがあります。融資できる上限額も信用保証協会の影響を受けないため、金融機関が独自に実施した審査の結果によって決まるのが一般的です。
なお、信用保証協会の保証を受けて実行する融資は、「保証付き融資」と呼びます。
■アパレル業界
アパレル業界においては、メーカーが定める正規価格を指して「プロパー価格」と呼びます。「フルプライス」や「メーカー希望小売価格」と同義です。商品のタグに記載してある、値下げ前の価格を指します。
メーカーの直販サイトや正規販売店に限らず、メーカー希望小売価格で販売していれば「プロパー価格」での販売に該当します。
在庫処分やセールなどでメーカー希望小売価格から値引きして販売する場合は、「割引価格」「セール価格」などと呼ぶのが一般的です。
■IT業界
IT業界においては、自社で直接雇用している従業員を指して「プロパー」と呼称します。業務委託契約で開発チームに加わっている外注先企業の社員や、フリーランスと区別するための呼称です。
他にも、業務の全部または一部を受託した企業が、発注元の企業を指して「プロパー」と呼ぶケースもあります。2種類の意味があるため、IT業界で「プロパー」という用語を耳にしたときは、どちらの意味で用いられているか間違えないようにしましょう。
シーンによって使い方異なる「プロパー」の意味を押さえよう
「プロパー」は「適切な」や「正しい」を意味する単語ですが、業界や用いられるシーンによって具体的な意味が異なるケースがあります。
「プロパー社員」や「プロパー融資」のように、他の言葉と組み合わせて使用するのも一般的です。
ビジネスで「プロパー」という言葉を耳にしたときは、どのような意味で用いられているのか正しく判断して、会話の内容を誤解しないようにしましょう。
言葉の意味を正しく理解することで、相手の会話を正確に理解したり、表現の幅を広げたりできます。
構成/編集部