昭和の時代から、夜の社交場として親しまれてきた「スナック」。サラリーマンが仕事帰りに立ち寄り、年輪を重ねたママに愚痴を聞いてもらいながら一杯……。そんなイメージを抱く人も多いと思うが、昨今では新風が吹き始めている。昨年から、都内や地方観光地のスナックを中心に導入されているのが、バーチャルキャラクターの「雫ママ」だ。
開発を手がけるのはアバターダイニングラボ有限責任事業組合。担当の北垣歩武さんは、「普段からVTuberなどに親しみのある若い客層の獲得と人材不足解決を目指しています。雫ママは、裏側はAIではなく人なので、居住地を問わずに採用できるというメリットがあるのです」と話す。
また、スナック初心者を対象としたスナック巡りツアーも登場。企画・運営を務める五十嵐真由子さんは、スナック女子=スナ女Rという言葉も作った先駆者だ。
「スナックはこれまで商圏が狭く、常連さんを軸とした運営で成り立っていました。ツアーを通して、スナックになじみがない人たちとの橋渡しができればと思っています」(五十嵐さん)
また、20代で経営側に回る例も。東京・国立の「スナック水中」を切り盛りするのは、坂根千里さん。一橋大学卒業後、アルバイトしていたお店を受け継ぎ、「20代応援パック」や若手アーティストとのコラボで企画力を発揮。「若い人にも、この店をサードプレースとして楽しんでほしい」と、スナックのハードルを下げる取り組みを続け、新時代の幕開けを目指す。
リアルより話しやすい!?〝アバターママ〟が接客【アバター雫さん】
モニターに表示されるアバターママが接客する。2023年から店舗での実証実験を開始。「スナックは敷居が高いと思っていたけれど、アバターがいると聞き初めて来た」という20代の女性客がいたり、「ママと初対面で話すのは緊張するが、アバターだと話しやすい」という声があったりと、手ごたえを得ている。
雫ママ開発にあたり、服装や小物はスナック関係者へリサーチ(写真はイメージ)。
スナックマニア監修!ガイド付きだから安心【スナック入門ツアー】
2023年4月からスタート。700軒超のスナックを行き尽くした五十嵐さんと繁華街を街歩きした後、スナック2軒をハシゴする。スナックの〝お作法〟も解説してくれる初心者にやさしい内容で、参加者の多くはZ世代だという。
オンラインスナック横丁文化株式会社
代表取締役
五十嵐真由子さん
Z世代が新卒で継業し新たな社交場が誕生【スナック水中】
「料金体系がわかりにくいという点も、若い人にとってはネック」という理由で設けた、2時間飲み放題・歌い放題で3000円の「20代応援パック」が好評。訪れるお客さんには、昭和歌謡や昭和カルチャーが好きな若者も多いという。
東京都国立市富士見台1-17-12 1F
[電]042・505・7307 [営]火〜土19:00〜24:00 ([休]日・月)
取材・文/坂本祥子