文化庁のバックアップやインバウンドの活況を背景に、日本の名城に宿泊できる「城泊」がブームになろうとしている。すでにスタートした平戸城(長崎)、大洲城(愛媛)に続き、今年6月には福山城(広島)、7月には丸亀城(香川)が城泊を開始する予定だ。
城好きとして知られ、関連書籍も上梓された城郭ライター・編集者の萩原さちこさんは、城泊の魅力を次のように話す。
「取材をした大洲城を例に挙げると、入城体験や食事は武将・加藤貞泰が城主の時代を想定し、学術的な観点から、体験コンテンツを作り込んでいる印象を受けました。地域の伝統文化の継承活動も取り入れ、城だけでなく地域全体に活気を取り戻そうという姿勢に好感を持ちました」(萩原さん)
城は地域のシンボルとしてだけではなく、他所から人を呼び込む観光資源となってきた。ただしその一方で、インバウンドや、城好き・歴史好きの観光客を意識しすぎることについては、抵抗を感じると萩原さんは話す。
「城泊が、多くの人に歴史を知ってもらい、好きになってもらうきっかけになればと思います。同時に、地域資産を活用するうえで、その土地の人に城を誇りに感じていただくのも大事。地域と歴史、文化を体験し、それを伝えながら発展していくことに城泊の意味があると感じます」(萩原さん)
金額的には高額に思われるものの、天守を独り占めできるなどの内容を考えればコスパは決して悪くない。城泊で日本の文化・伝統を再発見する動きに注目だ。
火縄銃を使った祝砲で一夜城主の入城を歓迎
愛媛県 大洲城
1泊2名2食付き/132万円〜
木造復元の天守や重要文化財の櫓(やぐら)など城全体を客室として利用可能。夕食で振る舞われるのは武将・加藤貞泰に縁のある饗応料理。利用期間は8月と12〜2月以外。
1617年における加藤貞泰の入城シーンを体験できるほか、特別プログラムが充実。
〈 城の見どころ!〉「木造で復元された珍しい4重天守が見どころ。近くにある清流・肱川の屋形船や予讃線から眺める城の情景は見事です」(萩原さん)