操縦性や乗り心地のバランスがいい
ロータリーEVの走りだが、スタートからの動きは、ピュアEVの「MX-30」のほうが軽く、加速感も速く感じる。ロータリーEVはグンッ、という瞬発力はない。これは、モーターの出力/トルクの差と、車両重量の差も関係している。ピュアEVは145PS/230Nm。ロータリーEVは170PS/260Nm。重量は1650kgと1780kg。電池だけと、電池+ロータリーエンジンの差が、加速感の違いになって表われている。ロータリーEVはトルクの立ち上がりの過激さを抑えるチューニングが施されているので、過激という点ではピュアEVだ。
しかし、実際は0→100km/hを計測してみると、両車ともに8秒台前半と後半なので、コンマ何秒かの違いだった。アクセルレスポンスの俊敏さを楽しみたいのなら、ピュアEVだ。操縦性や乗り心地だが、バランスが取れているのは、ローターリーEV。
ピュアEVは、バッテリーの量も多いので、床下の重さを感じてしまう。コーナーでもその重さで、下半身のどっしり感はあるのだが、コンパクト2+2シーターのスポーティーカーとしては、重厚感がありすぎる気がする。使い勝手は、プラグインハイブリッドのロータリーEVだろう。
もちろん、1500Wの給電機能をはじめ、別売りの可搬型外部給電器や、これも別売の建物に設置した充放電に接続すればクルマから建物に電力を供給することもできる。電池とガソリンタンク(50L)が満タンだったら、約9.1日分の電力が供給できる、という給電性能も持っている。
充電は普通(AC)と急速(CHAdeMO)に対応している。カタログではAC(6kW)で20%→80%充電にかかる時間は1時間50分。DC(40kW以上)で約25分。試乗中に自宅ガレージ(3kW)では27%→100%は5時間40分と表示された。
世界で唯一のロータリーEVは、コンパクトで使い勝手のよいEVだが、+2シーターという性格を考えると、実用車ではない。スタイリングもクーペルックでスポーティーならば、もう少しロータリーをアピールする大きなエムブレムや、スポーツ性を高めた性格のロータリーEVのほうが、ユーザーも楽しいのではないだろうか。
家族の白い目に耐えて「RX-7」や「RX-8」に乗り続けているロータリー好きのお父さん!ロータリーEVを加えれば、奥さんも運転できるし、ガソリンもほとんど使わずに(その代わり電気代は少し高くなるけど)、ロータリーライフを続けられますよ!
■関連情報
https://www.mazda.co.jp/cars/mx-30/mx-30_rotary-ev/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博