新しいメカニズムのEVが登場した。マツダがロータリーエンジンを使ったプラグインハイブリッド(PHEV)を搭載したコンパクトモデルを発売したのだ。PHEVは、エンジンとモーターを使い、走行する方式が多い。電気を蓄えてモーターを動かし走行し、電気がなくなるとエンジンで走行するハイブリッド方式に、電池に外部から充電できる機能を加えることで、電気で走る距離を長くしているのがプラグインハイブリッドだ。この電池に充電する部分を、マツダはロータリーエンジンを動かして充電させることにした。ロータリーエンジンはあくまで充電用であり、走行用ではないというのがポイントだ。
世界初で、世界唯一のロータリーエンジン搭載車
マツダのロータリーエンジンは、2012年で搭載を中止した。しかし、社内では少人数でロータリーの開発を続けていた。今回、ロータリーを搭載した「MX-30」は、2020年10月に発売されたコンパクトカーだ。4人乗りだが、後席用のドアは幅が狭く、前席ドアを開けなければ、開かない変則の4ドア+リアゲートのパーソナルカー。2021年1月に100%電気のピュアEVをラインアップに加えている。その後、年次改良を受け、2023年11月にロータリーエンジンを搭載したEVを商品化した。もちろん世界初で、世界唯一のロータリーエンジン搭載車だ。
搭載するロータリーは1ローターの新開発エンジンで、排気量は830cc、最高出力は72PS、最大トルクは112Nmで、電池に電気を供給する。モーターの性能は170PS、200Nmで、この出力/トルクで「MX-30」を動かす。
試乗車は走行距離4080km。イグニッションオンで、運転席の目の前の画面が点灯した。充電100%で、航続距離は90kmと表示されている。カタログ値107km(WLTCモード)より若干少なめだ。走行モードは「EV」「ノーマル」「チャージ」の3モード、センターコンソール上のスイッチで切り替えることができる。「EV」モードは文字通り、電気+モーターで走行を続けたいときに使う。「ノーマル」は、ロータリーの発電電力を使いながら走るモード。「チャージ」は電気を必要なだけ確保して、ロータリーでチャージしながら走るモードだ。
ロータリーを始動させてのチャージモードは、電池の電気残量が42~43%以下にならないと作動しない。充電用のロータリーエンジンを始動させるには、50km以上走行しなければならない。これは1日の走行距離としては長い。長距離ドライブに出かけなければ、電池蓄電量が減らない。
あとは、高速走行や急加速、登坂時にロータリーが作動して、発電をするぐらいしか、ロータリーエンジンの作動は確かめられない。ロータリー作動も、わずかに唸り音が聞こえるぐらい。その音もアクセル開度、車速と連動するように回転・負荷を変化させているので、ドライバーには運転操作に対してリニアな感覚なのだ。
EV走行時には、モーター音はもちろん走行音も抑えられ、音の周波数帯をチューニングし、人間がクルマとして最も自然を感じるサウンドチューニングを行っている。走行音、エンジン音のチューニングに関しては、国産EVだけでなく、輸入車EVの中でもトップレベルの音チューニングといえる。