スポーティーカーのような出足で痛快な走り
今回、試乗したのは、一部改良を受けたWLTCモード25.4km/LとなるHV ZのFFモデル。車両本体価格は249.6万円だが、メーカーOPの185/55R16タイヤ&16インチアルミホイール装着車だった(Zグレードの標準タイヤは185/60R15。ホイールはスチール)。一部改良で、走行性能にかかわる進化はほぼないとのことだが、発売してから約4年半、GRモデルもあるいまだからこその熟成はきっとあるに違いない・・・。
なお、今や軽自動車にも採用される電子パーキングブレーキとオートブレーキホールド機能は依然、未搭載である。よって、パーキングブレーキはレバー式となる。
運転席に着座してまず感じられるのは、シートの良さ。トヨタの上級車と同様、背中の優しい包まれ感、座面のソフトな靴ション性がもたらす体重によるサポート感が好ましい。前方視界に不満はないが、Cピラーの太さによる斜め後方視界はいまひとつ、といったところだが、そもそも5ナンバーサイズ、最小回転半径4.8~5.1m(標準装着タイヤ)の小回り性が効くコンパクトカーなのだから、取り回し性に不満などあろうはずもない。
走り出せば、車重1090kgで1.5L 3気筒エンジン91ps、12.2kg-m、フロントモーター80ps、14.4kg-mのスペックだから、遅いわけがない、どころか、出足からの強力なモーターパワーによって、どのドライブモードにセットしていても、なんとスポーティカーのように速い。その速さを受け止めるボディ剛性の高さ、硬めのサスペンションセッティング、試乗車の場合は185/55R16サイズのタイヤによって、乗り心地はけっこう硬めで、荒れた路面、段差ではけっこうなロードノイズ、ガタツキあるショックと音に見舞われるのだが、中立付近のドシリとしたタッチ、そこから切り込んでいく時の安心感ある重みと、路面からのインフォメーションの確かさあるパワーステアリングのおかげもあって、なんともコンパクトスポーツカーのような走りのテイストを伝えてくれるのだから、走りは痛快だ。
すでに説明しているように、エンジンは3気筒で、ゴロゴロしたフィールはないとは言えず、回すとけっこうなノイズが車内に充満するとはいえ、巡行時ならそこそこ静か。そこはHVなのだから、当たり前とも言えるのだが・・・。
もっとも、乗り心地面に特化すれば、標準装着の15インチ、またはG、Xグレードの14インチのほうが快適であることは想像に難くない(ロードノイズを含め)。このZグレードでも、標準の15インチで乗るのがお薦めだ。もっとスポーティにヤリスを走らせたいなら、ラリーなどでも活躍するGRを選択すべきだろう。
車両価格対満足度では、車両本体価格229.9万円のGグレードFFが最有力。それにLEDヘッドランプ&ターン、クリアランスランプ(G以下は昭和な香りムンムンなハロゲンランプだ)や、ZグレードでもOPとなるAC100V/1500Wアクセサリーコンセント、安全性がさらに高まるブラインドスポットモニターなどを装着すれば万全、長く乗り続けられるだろう。
文・写真/青山尚暉