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マネジメントや心理学の話題で、ピグマリオン効果という言葉が登場することがあります。
ピグマリオン効果とは、具体的にどのようなものを指す言葉なのでしょうか。ビジネスで重視される理由や、マネジメントに生かすコツを紹介します。
ピグマリオン効果の定義・語源
ピグマリオン効果が具体的にどのようなものを意味する言葉なのか、なぜそのように呼ばれているのかを紹介します。正しく理解するためにも、事前に一通り確認しておきましょう。
■期待が成果向上につながる心理学用語
他者からの期待が要因でパフォーマンスが高まり、より高い成果につながることを示す教育心理学の用語が、ピグマリオン効果です。教師期待効果やローゼンタール効果ともいいます。
ビジネスシーンであれば、マネージャーがメンバーに対して「あなたなら本件できっと良い成果を収めると信じている」と伝えることで、メンバーが本来の力以上のパフォーマンスを発揮し、期待以上の成果を出すのが代表的な例です。
■ピグマリオンの語源はギリシャ神話
ピグマリオン効果という名称は、ギリシャ神話に登場する王の名であるピュグマリオーンに基づいたものです。
神話の中で、ピュグマリオーンは自らが制作したガラティアという彫像に恋愛感情を抱き、女神アフロディーテに祈るようになります。アフロディーテはピュグマリオーンの願いを聞き入れ、ガラティアを人間の女性にしたというストーリーです。
期待していたことが実現したという神話の内容から、現在使われている「期待を受けて予想以上の成果を出す」という意味を持つようになりました。
ピグマリオン効果がビジネスで重要な理由
継続的に成果を出し続け、成長することが求められるビジネスシーンではピグマリオン効果が重要視されます。マネージャーをはじめとした管理層にとっては、特に意識することが大切です。ピグマリオン効果が重要な二つの理由を見ていきましょう。
■成長とパフォーマンス向上につながる
ピグマリオン効果をうまく活用すれば、メンバーのパフォーマンスを高めて、一人一人がより高い成果を出せるようになります。
一人一人のパフォーマンスを高めることは、チームとしての成長にもつながります。日々のマネジメントでピグマリオン効果を意識することは、成果を出し続けることに直結するため重要です。
上記の目的を達成するには、日頃のコミュニケーションを通じて、メンバーに適度に期待していると伝えることが大切といえます。定期的に1on1の機会を設けるなど、メンバーに向き合う時間を確保しましょう。一定の裁量権を与えて、自分で試行錯誤しながら業務に取り組める環境を用意するのも効果的です。
■メンバーに自信を持ってもらえる
ピグマリオン効果を考慮したマネジメントは、メンバーの自信にもつながります。
自信を持ってもらうには、日頃から小さな成功体験を積み重ねることが必要です。そのため、日々の業務で達成できるレベルの目標を提示し、チャレンジしてもらうことを意識しましょう。
メンバーは一つ一つの課題を達成していくと、「自分でもできる」と思うようになります。
その結果、期待されている成果を出すことは十分に可能であると認識し、チャレンジする意欲が高まるのがメリットです。
ピグマリオン効果を引き出すマネジメント
日頃のマネジメントでピグマリオン効果を引き出すために、何ができるのかを紹介します。
どのように取り組めばよいか悩んでいるなら、以下で紹介する三つのポイントを意識しましょう。
■日頃から適度に期待する
ピグマリオン効果は、期待されたことが要因でより高いパフォーマンスを発揮するものです。そのため、マネジメントの現場では、メンバーに対して期待していると示す必要があります。無理なく達成できる課題を与え、「今回の目標は十分に達成できると思うから、頑張ってほしい」と伝えるとよいでしょう。
日頃のコミュニケーションでは、できなかった部分を否定するのではなく、できた部分に着目して褒めることが大切です。肯定的な態度で接して意欲を高めれば、メンバーがより自信を持って業務に取り組めるようになります。
ただし、過度に期待して達成するのが難しい目標を設定するのは逆効果です。達成できなかった場合に、「自分には無理だ」と感じてパフォーマンスが低下する可能性があるためです。
■メンバーの裁量に委ねる
一度業務を委ねたら必要以上に口を出さず、各メンバーに任せるのも大切です。過度に口を出すと「信頼されていないのではないか」と感じて、自信を失う可能性があります。アドバイスを求められたときは適切にサポートしつつも、基本はメンバーの判断を信じましょう。
メンバーに十分な裁量権を与えることも忘れてはいけません。裁量権がないと、メンバーは何かアクションを起こすたびに承認を求めなければならず、スピーディーな業務執行が難しくなります。
適度に期待しつつ、自分で試行錯誤して業務に取り組む環境を用意することでピグマリオン効果が生まれるため、メンバー一人一人の裁量権が大きい環境を整備しましょう。
■結果と過程をセットで評価する
フィードバックするときには、結果だけに注目するのではなく、その結果に至った過程にも目を向けましょう。好ましい結果が出たときは何が良かったのかを明確に伝え、今後もその取り組みを続けるように促すと効果的です。ただし、過度に高く評価すると、現状に満足して成長する意欲を失うため注意しましょう。
思ったような結果が出なかったときは、改善するために必要となる取り組みのヒントを与えます。そうすることで、メンバーが今後何に取り組めばよいか理解できるようになります。