昭和ノスタルジーをはじめ、様々なテーマでジオラマを制作する〝情景師〟が自動でピントを合わせる近未来のアイウエアを試した。果たして、目にかかる過度なストレスや、加齢による目の衰えをカバーできるのだろうか。
情景師
アラーキー
大手家電メーカーのプロダクトデザイナーから情景師に転身。活動10年で手がけた作品の多くはイベントの展示用などに使われている。ジオラマに関する書籍も多数。
サイバーパンクテイストも感じる懐かしい情景。お店の奥にある照明は点灯できる。
じわり忍び寄る目の衰えをオートフォーカスで一蹴
目を酷使するアーティストたちの救世主として期待されているメガネが、目のピントを自動で調節するヴィクシオンの『ViXion01』だ。
この近未来的なアイウエアがどこまでアーティストの仕事をサポートしてくれるのか。緻密なディテール再現テクニックが、SNSなどで話題となった、情景師のアラーキーさんに試してもらった。
アラーキーさんは、脱サラしてジオラマ制作の道へと進み、今年で約10年のキャリアを持つ。見た人を感嘆させる、構図にもこだわった作品は、ジオラマ・模型ファン以外にもファンが多い。しかし、細部までとことん描き出す作風もあり、常に目にストレスを与えている。
「目が衰えると、細かいところが見えにくくなることで、仕事が粗くなり、人によっては作風まで変わってしまうこともあります。ジオラマ制作では塗装も重要なポイントになりますが、思ったような仕上がりにするのは困難になると思います」
アラーキーさんはもともと近視のため、仕事では、手元が拡大できるメガネタイプのルーペを使用。過去に遠近両用メガネも試してみたが、仕事には不向きだったとか。こうした試行錯誤の経験があるため、掛けるだけでピントの合う『ViXion01』への関心は高く、今回の試用を楽しみにしていたという。
昭和の情景からSF映画モチーフの作品まで守備範囲は広い。ゴジラファンでリビングにもフィギュアが飾られていた。
アラーキーさんが体験した一瞬でピントの合う驚き
『ViXion01』は充電式で、3時間の充電で約10時間連続使用ができる。鼻パッドは大・小2種類あり、装着する時にまずはどちらかを選択。装着したら鼻パッドの幅、つるの高さのズレを調節し、レンズを左右にスライドさせて見やすい位置に調節する。オン・オフスイッチはなく、右側のつるを開くと自動的にスイッチが入る。
「バッテリーを内蔵しているのでもっと重いかと思いましたが、掛けた感じはメガネと変わりがないですね。本体の縦幅は細く、ややカーブを描いたカバーが、顔の左右まで覆うデザインはSFのバイザーを連想させます。掛けた状態で鏡を見た時、『ゴジラ』シリーズの、キングギドラを操る宇宙人『X星人』を思い出しました。超魔術もできそうですね(笑)」
次に掛けたまま左目を閉じ、右目だけで約1m前後離れた目標物を見て、つるの右側にある視度調節ダイヤルを回し焦点を合わせていく。焦点が合ったところで左ボタンを離すと設定が記録され、オートフォーカスモードへと切り替わる。
「すごいですよ、これ。一瞬でピントが合いました。初めてコンタクトレンズを着けた時のように、ボヤけずハッキリ見えます。本の細かい文字もしっかり読めますね」
自分の指先と遠くを交互に見比べながら、ピントの合う速度を確かめる。
「どこを見てもピント合わせが追随し、遅延は一切感じません。老眼鏡も、ルーペ型メガネも、遠くのほうを見るとボヤけてしまいますが、これはどこを見ても鮮明です。実際に使ってみると、技術力に驚かされます」