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「Google Glass」の販売終了と「Apple Vison Pro」の登場、過渡期にある進化系メガネの次なる一手

2024.06.09

技術的制約の多い光学シースルーのメガネ型に対して、ビデオシースルーのHMDが台頭。MRな未来を実現するのは、果たしてどっちか? ITジャーナリストの西田宗千佳氏に聞いた。

進化系メガネをインプレし続けるITジャーナリストが解説!

西田宗千佳さんITジャーナリスト
西田宗千佳さん
最も多くのメガネ型デバイスをレビューしているひとり。VR、ARに造詣が深く、産業、エンターテインメントなど幅広い視点からアプローチしている。

『割り切った情報を表示するメガネに期待』

 メガネのように視界を覆うウエアラブルデバイスには、カメラを通して見る現実世界に3Dのオブジェクトを重ねるビデオシースルー型と、実際に見えている世界に重ねる光学シースルー型の2系統がある。『Apple Vision Pro』や『Meta Quest 3』は前者、『Magic Leap 2』や『Microsoft HoloLens 2』『XREAL Air 2』は後者だ。「スマートグラス」という言葉が指すのは主に後者の製品群だが、その先駆けとして2012年からプロジェクトをスタートした『Google Glass』は昨年、法人向けの『Glass Enterprise Edition 2』の販売を終了した。

「光学シースルーでは透明なディスプレイを作らなきゃいけなくて、今の技術では透明なディスプレイで視界を広くするのは難しいんです。例えば、『Microsoft HoloLens 2』がやろうとしていたのは、今の『Apple Vision Pro』とほぼ同じことですが、視界の狭さが大きなネックになっていました。また、目の前に情報を出すだけなら簡単ですが、それを歩きながらでも見えるようにしようと思うと、人はいろんなところに視線を動かすので、どこに合わせるかという問題もある。今の技術で本気でMR的な体験価値を提供しようと思ったら、ビデオシースルーでかつ、高精細なカメラを同時にたくさん処理して合成し、ディスプレイに映し出す必要があります。そのために『Apple Vision Pro』は、あれだけ高価な製品になっているわけです」と、西田さんは説明する。

「逆に光学シースルーで実用的な製品を作ろうと思ったら、現時点では割り切りが必要。『XREAL Air 2』のように目の前に画面を表示するだけとか、『Ray-Ban Meta』のように音とカメラだけとか、機能を割り切った製品だけが生き残っている。特にサングラス型のディスプレイでは、似たような製品が続々と出てきています。メガネ型ゆえの割り切りの美学みたいなものが、今ちょうど旬を迎えていると言ってもいいでしょう。

 しかし、『Google Glass』が目指していたような、歩きながら情報を表示するようなものは、まだ実用レベルのものが出てきていません。機能さえ割り切れば、スマホのいいコンパニオンになれる可能性もあると思うので、今年の後半あたり、そろそろそうした製品も出てくるのではと注目しています」(西田さん)

 一方のビデオシースルーは、コストダウンが進めば本格的に普及する未来もあるのだろうか。例えば、『Apple Vision Pro』の空間コンピューティングが、今のスマホのように、誰にとってもなくてはならないものとなる可能性はあるのか? 西田さんは「それは実現するとしても、かなり先の話になるだろう」と話す。

「現状では、ビデオシースルーのデバイスはあくまで自宅やオフィスでPCの代わりに使うもの。安全面からも、スマホのように外で使うのには、光学式シースルーのほうが適していると思います。ただどちらにしてもバッテリーの問題があるので、今のメガネのように負担なく身につけられて、スマホを代替するような機能が完全にワイヤレスで使えるようになるのは、当面難しいでしょう。バッテリーやスマホが有線でつながることになるので、もし外で使用するのであれば、それがファッショナブルに見えるような工夫も必要になるかもしれません」

スマートグラスの先駆けが撤退

Google Glass『Google Glass』は、動画撮影機能がプライバシーを侵害すると問題に。法人向けに再起をかけたが、昨年販売終了が発表された。

空間コンピューティングを提示

Apple Vision Pro「『Apple Vision Pro』は今はまだ高価だが、5年後にはこういう世界が来るということを、わかりやすく提示した」と西田さん。

取材・文/太田百合子 写真/AFP/アフロ

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