世界中のXR(※)デバイスを取り扱い、メタバースやVRコンテンツなど数多くのアプリケーションも手がけてきたNTTコノキュー。XRグラスがもたらす新しい日常の可能性を聞いた。
NTTコノキュー
テクノロジー部門 部門長
安藤智浩さん
XR(Cross Reality)サービスの開発を担当。5G(第5世代移動通信システム)時代における新たな付加価値の提供を目指す。Magic Leap社には2019年に出資を開始した。
人間の能力を拡張するスマートデバイスに
以前からXR事業に取り組んでいたNTTドコモ。業務用XRグラスの初代『Magic Leap 1』も2020年に販売を開始した。
「『Magic Leap 1』をご体験いただいた皆様には驚きをもって迎え入れてもらいました。現実と仮想空間が交わる、未来の世界をお伝えできたかな、と考えています」(安藤さん)
そして、22年に設立されたNTTコノキューがNTTドコモのXR事業を受け継ぎ、最新型の『Magic Leap 2』の販売を担当する。「軽くて長時間かけていても疲れにくい」「視野角が広く没入感が向上したこと」が高く評価される。従来は医療や建設、製品の開発現場などで使われる機材だったが、『Magic Leap 2』は作曲家の坂本龍一氏の姿を見られるバーチャルコンサートなどエンタメの世界でも活用されている。そして最大の特徴であるディミング(調光)機能によって、明るい場所でもレンズに表示される3Dモデルを細部まで観察できるようになった。
「明るい場所では見えにくいというのが従来の光学シースルー式XRグラスの宿命だったのですが、『Magic Leap 2』はそれをディミング機能を搭載することで、克服しました。またVR重視のXRデバイスと違ってCPU/GPUのパワーを3Dモデルの描写に集中できるため、より精細な表現が可能になってるんです」(安藤さん)
さらに、『Magic Leap 2』は〝人間の能力を拡張できる〟デバイスだと続ける。
「『久しぶり!』と声をかけてきた人の頭上に〝○月△日のパーティーで出会った□□さん〟といった履歴情報を表示させるといった、XRグラスだからこそ実現できる新しい世界があると考えています」(安藤さん)
業務用ゆえに『Magic Leap 2』は高価格すぎて、個人ユーザーは購入しにくい。そこでNTTコノキューはシャープと協業で、スマートフォンと連携するXRグラスを開発している。24年内にミドルクラスの価格帯で発売予定とのことで、このモデルがXRの一般普及につながることに期待したい。
プロが求めた機能・性能を
メガネスタイルの小型ボディーに凝縮した業務用XRグラス
NTTコノキュー『Magic Leap 2』
オープン価格(実勢価格約43万円)
小型で軽量な最新ハイエンドXRグラス。帽子やヘルメットをかぶった上からでも装着しやすく、ハンドトラッキングも装備。両手で表示コンテンツの操作もできる。
従来モデルと比較して視野角が大幅に向上。特に縦方向の視野角が広くなり、首を動かさなくても3Dモデルが見やすくなった。
XR(※):クロスリアリティの略称で、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、現実だけでは知覚できない新たな体験を創造する技術。「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」などを包括した総称でもある。
取材・文/武者良太 撮影/水野谷維城
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2024年3月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。