『名探偵コナン』から学べる平成の様々なカルチャー
ギャル文化の流行
28巻(2000年)では小五郎が日焼けした女性を「ジャングル育ち」と勘違いし、ガン黒、ゴン黒、山姥ギャルという言葉について説明される。51巻(2005年)では連載当時に流行していた携帯電話の暗号のような「ギャル文字」が登場し、女子高生たちがすぐに解読。全く読めなかった小五郎だが、徐々に理解できるようになる。時代とともに取り上げられるギャル文化の違いがおもしろい。
カラオケ店の変化
5巻(1995年)ではミュージシャンが打ち上げをして殺されるカラオケボックスが登場。大部屋で大人の飲み屋の雰囲気だ。通信カラオケが急成長していた時期にも重なる。それが59・60巻(2007年)になるとコナンたちが学生だけで立ち寄る気軽な場所に。細い通路で小型の部屋が並ぶ狭い設計は、利用者の変化に合わせたニーズの反映が感じられるとともに、事件の謎を解くカギにもなっている。
インターネットや携帯電話などの通信環境
テープメディア19巻
平成初期の頃にはまだまだテープメディアが健在であり『名探偵コナン』の様々なトリックなどにも使われた。18・19巻(1998年)に描かれた大学教授の密室殺人事件では、留守番電話にメッセージを残す際にテープが巻かれる仕組みを利用。テープにつけた鍵を部屋に引き込んで密室を作り出した。39巻(2002年)ではビデオテープが首を絞める凶器に! 留守番電話をはじめ、様々な機器にテープメディアが使われていたことを作中からうかがい知れる。
携帯電話
平成における携帯電話の普及からスマホへの移り変わりが、コナンの所持する通信機器から見て取れる。14巻(1997年)からは阿笠博士の発明したイヤリング型携帯電話を使用。その後は二つ折りの携帯電話を経て、スマホに至る。携帯電話のエピソードで印象的なのは、携帯電話のボタンをプッシュすると鳴る音が〝あの方〟の正体のカギを握っていたこと。ファンには有名な話であり、平成の携帯電話だからこそ成立した謎解きだった。
ファックス/パソコン通信
『名探偵コナン』の連載開始当初は、インターネットが普及していなかった〝FAXの時代〟。作中では連絡やトリックに使われた。7巻(1995年)には阿笠博士が開発した「弁当型携帯FAX」が登場。18巻(1998年)では犯人がFAXの紙を使ったトリックで放火する。通信回線の普及状況によって、その描写も変化。18巻(1998年)では阿笠博士がパソコン通信中に電話回線が使えない描写が出てくる。
犯行動機の変化にも平成における〝価値観の多様化〟が実は関係している!?
「最近では平成の時代に進んだ〝価値観の多様化〟を受け入れられない人の、衝動的な犯罪が増えたように感じます。それが作品にも見受けられ、83巻(2014年)では、突発的な感情から助手を殺害する恋愛小説家が登場。犯人の後悔する様子が印象に残ります」(さやわかさん)
取材・文/久村竜二