〝昭和〟や〝80年代〟に続き、今注目を集めているのが〝平成〟だ。若者世代にとって新鮮に映る平成のカルチャーは『名探偵コナン』で色濃く描かれている。若者世代に刺さるヒット商品のヒントを、作品の中から読み解こう!
物語評論家
さやわかさん
1974年生まれ。ライターや漫画原作者としても様々なメディアで活動中。主な著作は『僕たちのゲーム史』(海星社)や『文学としてのドラゴンクエスト 日本とドラクエの30年史』(コアマガジン)など。
『名探偵コナンと平成』(コアマガジン)
平成最初期に連載を開始した『名探偵コナン』をもとに、平成という時代を独自の視点で考察。当時の世相と作品の描写を照らし合わせて時代の真実を推理するとともに、カルチャーや価値観の変化などにも触れる、さやわかさんの著書。
平成のカルチャーとともにチームづくりも学べる
さやわかさんにとって造詣の深いゲーム業界では平成のムーブメントが顕著になっているそうだ。
「数年前までは80年代風のドット絵がレトロとして扱われていました。しかし最近になってオマージュが増えているのは、ポリゴンを使ったゲーム。『バイオハザード』のように解像度が粗くてカクカクと動く〝平成のローポリゲーム〟をリスペクトする若いクリエイターの作品が人気を集めています」
そんな平成の要素が『名探偵コナン』ではそこかしこに描かれる。
「ギャル文化、カラオケ、通信環境、テープメディアなど、当時は最先端だったトレンドが、謎解きやアリバイづくりなどに取り入れられていますよね。少年漫画として、若者文化を強く意識しているように思われ、時代の移り変わりをうかがい知れるのがおもしろいです」
平成初期に連載が始まった『名探偵コナン』には、当時はまだ残っていた昭和的な男性像が描かれている一方、平成中期以降から増してきた協調性や多様性の重要性も読み取れるという。
「例えば毛利蘭は、小五郎を支える良妻賢母な顔だけでなく、空手を得意とする活発な側面を持っていて、誰かに守られるだけの女性ではありません。工藤新一の〝変化〟についても興味深く、天才的頭脳を持つ名探偵でありながら〝独断専行〟という決定的な失敗によって子供=コナンにさせられてしまう。それ以降、周囲の協力を得て、事件を解決するようになります。最新話のあたりでは、いわばコナンを中心とする犯罪捜査チームまで生まれているほどです。今の時代は能力のある人間でも自分の弱みを見せることで仲間を作り、周囲の人を動かしながら仕事を進めています。そんな平成中期以降におけるチームビルディングの在り方も、ビジネスパーソンが『名探偵コナン』から学べる要素のひとつだと思います」
DIME6月号は読みごたえたっぷりの「名探偵コナン」50ページ大特集
DIME6月号は今年連載30周年を迎えた「名探偵コナン」を約50ページにわたって大特集! 全世界累計部数は2.7億冊を突破、昨年公開の映画『名探偵コナン黒鉄の魚影(サブマリン)』は初めて興収100億を突破するなど進化を続ける超人気作品の魅力を徹底取材!
連載30年の歩み、愛され続ける理由、コナン沼にハマった著名人インタビュー、担当編集が明かす制作の舞台裏、コナンで身につくビジネススキルなどあらゆる角度からコナンの魅力を紐解きます。