漫画がビジネスを学ぶうえで〝理想的なメディア〟であり、特に『名探偵コナン』は、ビジネスの課題を解決する手法として注目を集める「ロジカルシンキング」を養うのにピッタリだと上野豪さん。いったいどういうことなのだろうか?
MBAマンガアナリスト
上野 豪さん
漫画から学ぶビジネススキルをテーマに活動する「グロービスMBAマンガ研究会」を設立。マンガ『スタンドUPスタート』監修。青山剛昌先生の大ファンで『名探偵コナン』も連載開始時から愛読。
ロジカルシンキングとは?
自分の経験だけではなく、情報を根拠にして論理的に思考し、最適解を導き出す思考法。課題の「問い」を設定し、その答えを導くための「仮説設定」をしていく。「仕事には正解がないので『問い』から『仮説』を考え、自ら答えを出すことが重要です」(上野さん)。生成AIの生成物を仕事に使えるのか判定する際も有効な手法だという。
ロジカルシンキング用語解説
「イシュー」
今、結論を出すべき問題のこと。正しいイシューを特定できないと、間違った方向に向かったり遠回りをしたりして、ロスが発生する。常にイシューを意識することが大切だ。
「枠組み」
イシューに対し、その答えに必要な根拠をまとめたもの。結論を導き出すための根拠をツリー状に示す「ロジックツリー」を使うと思考の飛躍や論点の見落としを防ぎやすい。
「初期仮説」
イシューに対して、今ある情報や経験から仮の答えを推測すること。初期仮説では新しい情報を準備せずに答えを想定し、裏づけの情報だけを集めるのが効率的。
『名探偵コナンに学ぶ ロジカルシンキングの超基本』(かんき出版)
様々な情報から結論を導いていくロジカルシンキングの基本について、上野さんが丁寧に解説。『名探偵コナン』の具体的な事件や推理などに照らし合わせながら学べる、上野さんの著書だ。
事件の「枠組み」を考えると論理的な思考を養いやすい
ロジカルシンキングを学ぶのに『名探偵コナン』が理想的といえるのは、ひとつの事件が3〜5話程度で完結し、100巻を超える圧倒的なエピソード数があること。必ず明確な推理と答えがあるのもポイントだと上野さんはいう。
「ひとつの事件を何度も読み返せて、事件解決までの過程を何回もたどることができる。いわばドリルがたくさんあるようなもの。『名探偵コナン』は事件に対して『犯人は誰か』『殺害方法』『犯人の動機』といった『問い』を明示します。それをふまえて、読者としてはどういった『枠組み』があれば答えが出せるのかを考えて仮説を立てると、ロジカルシンキングのスキルが養えるでしょう。作中の描写から心に引っ掛かるポイントを抽出すれば、仮説を立てやすいと思います」
ロジカルシンキングを学ぶうえでおすすめのエピソードに、ニューヨークの事件(35巻)を挙げた。
「私の著作でも演繹的思考法と帰納的思考法を学ぶ題材として扱っていますが、プレゼンの時に同じような手法で説得します。前提をもとにプレゼンを組み立てるのですが、その前提の間違いを都度修正していくことで〝プレゼンの精度〟が上がります。ニューヨークの事件は、そういったスキームを学べるエピソードだと思います」
上野さんの好きなキャラクターである群馬県警の山村ミサオが、学びにひと役買うという。
「山村警部や毛利小五郎のような、コナンくんに対するわかりやすい〝反面教師〟がいることも、ロジカルシンキングを学びやすいポイント。小五郎は犯人を思い込みで決めつけるあまり、推理を間違えることが多々あります。それを自分事に置き換えた時、根拠もないのに判断して間違えることはありませんか? 仕事で『こうあってほしい』ということが念頭にあると、正しい答えにたどり着けません。そんなことも『名探偵コナン』から学べると言えるでしょう」
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©青山剛昌/小学館