我々はハローキティのことを、(意外と)何も知らない
サンリオのハローキティが、今年でなんと誕生50周年を迎えたという。記念すべきアニバーサリーイヤーということで、サンリオでは2023年11月1日から2024年12月31日までの期間を「50周年アニバーサリーイヤー」とし、「Friend the Future. 未来と友だちになろう。」をテーマに、さまざまな活動を繰り広げている。
サンリオが生み出したキャラクターは現在までの累計で450種類以上あるという。なぜハローキティは50年間も飽きられることなく、愛され続けているのか。巷では「ハローキティは仕事を選ばない」と言われるが、あらゆる分野の業種とコラボしているのはなぜか。そもそも、ハローキティとは何者なのか?日本のポップカルチャー、「カワイイ」の象徴として海外でも圧倒的な認知度を誇る存在なのに、考えてみると、我々はハローキティのことを知っているようで知らないのではないか。数々の疑問を解明すべく、サンリオに取材した。
「ハローキティ」の公式プロフィールは以下のとおり。お誕生日:11月1日 出身地:ロンドン郊外 身長:りんご5個分 体重:りんご3個分 血液型:A型 得意なこと:クッキーを作ったり、ピアノを弾いたりすること 好きな食べ物:ママが作ったアップルパイ
1975年「ハローキティのファミリー」。キティの家族は、商社に勤めているパパとアップルパイ作りが得意なママと、ちょっと内気な双子の妹ミミィとの4人家族という設定
サンリオのキャラクターの特徴は、“グッズ化”を前提に創られていること
質問に答えてくれたのは、1999年に株式会社サンリオに入社し、2022年からキャラクターのクリエイション全般を担当している執行役員の山田周平氏。「ハローキティを始めサンリオのキャラクターが他社と大きく違うのは、グッズから生まれているキャラクターというところです。アニメーション作品やコミック作品、ゲームやキャンペーンから生まれているキャラクターは多くあると思いますが、『このグッズを作るためにどんなデザインがいいか』と考えて出来上がったキャラクターというところが、独自性かなと思っています」(山田氏)
株式会社サンリオ 執行役員 ブランド管理本部 デザイン部門担当の山田周平氏
「グッズから生まれたキャラクター」という特異性の理由は、サンリオのビジネスモデルにある。サンリオの創立者で名誉会長でもある辻󠄀信太郎氏が社長時代に著した「これがサンリオの秘密です。」によると、山梨県庁の職員だった辻󠄀氏は外郭団体だった「山梨シルクセンター」で、山梨県の特産物である絹製品を扱っていた。民営化の波に乗り、1960年に同名の会社を創業したが、商売に不慣れなためあっという間に手形詐欺にあってしまう。仕方なく社員5人で銭湯の前に戸板を広げて小物雑貨を売る商売を始めた。これがサンリオの前身だという。
最初にヒットしたのが、花柄を付けたゴム草履「オリエンタルサンダル」だったことから、「デザインという付加価値を付ければ売れる」ことに開眼。オリジナルデザイン第一号として、いちごをテーマにしたシリーズのグッズを発売し、大ヒットさせた。
続く第二号オリジナルデザイン 「さくらんぼ」に失敗した辻氏は素人のアイディアに限界を感じ、水森亜土ややなせたかしなど著名な作家に発注したキャラクターグッズに切り替える。雑貨の売上は面白いように伸びたが、一方で「自前のキャラクターを持つことができれば、著作権で新しいビジネスが展開できる」ことに気づき、社内にデザイン部門を設け、デザイナーたちを採用し始めた。これがキャラクタービジネスの発端であり、若いデザイナーたちによって1970年代から、多くのキャラクターが誕生していく。そのひとつがハローキティだった。ちなみに現在、サンリオ社内には100人ほどのデザイナーが在籍しているという。