■連載/石野純也のガチレビュー
音声通話やボイスレコーダー、文字入力など、スマホの基本とも言える機能にAIを適用することで、サムスン電子は「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」の基本性能や利便性を大きく底上げした。2機種を「AIフォン」と呼び、これまでのスマホとは一線を画す端末としてアピールしている。それを支えるのが、「Galaxy AI」と名づけられた各種AI機能だ。
音声通話の翻訳に始まり、ボイスレコーダーの文字起こしや文字入力の文体変更、ブラウジングしているサイトの要約まで、Galaxy S24/S24 Ultraに実装されている機能の幅は広い。撮った写真の不足している部分を補う機能も搭載している。一方で、Galaxy AIはソフトウエアで実現している機能。2024年4月中旬からは、処理能力の近い、過去に発売されたモデルにも、適用が始まっている。
4月中旬のアップデートで、23年モデルの一部がGalaxy AIに対応した。写真はGalaxy Z Fold5
対象となっているのは、主に23年に発売されたフラッグシップモデル。筆者が普段メイン端末として使っているフォルダブルスマホの「Galaxy Z Fold5」も、Galaxy AIに対応した。では、フォルダブル端末とGalaxy AIの組み合わせによって、どのような利便性が実現するのか。最新モデルとの違いも含め、実機でその実力を検証していきたい。
2023年のフラッグシップもGalaxy AIに対応、性能差は少ない
日本でGalaxy AIが適用されたのは、主に23年に発売された処理能力の高いフラッグシップモデル。スマホは、「Galaxy S23」「Galaxy S23 Ultra」「Galaxy S23 FE」「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」の5機種が該当する。Galaxy S23 FEは例外だが、そのほかはいずれも「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」を搭載しており、処理能力は今現在でも十分な高さだ。オンデバイスAIを組み合わせているとはいえ、Galaxy AIが動作しないようなチップセットではない。
「Geekbench 6」で計測したGalaxy Z Fold5のスコア。23年モデルだが、今でも十分な性能を誇る
実際、Galaxy AIを適用したGalaxy Z Fold5と、最新モデルのGalaxy S24/S24 Ultraでは、機能差も非常に少ない。音声通話の翻訳機能も使えるし、ボイスレコーダーの文字起こしにも対応している。処理能力を必要とする生成AIを使った画像補完機能や、動画から自動的にフレームを作り出してスローモーション動画を作り出す機能にも、きちんと対応している。過去モデルだからと言って、できることに大きな差はないと言えるだろう。
Galaxy Z Fold5で利用可能なGalaxy AIの機能。基本機能の様々な部分にAIが使われていることがわかる
ほぼ唯一の違いと言っていいのが、壁紙の自動生成機能だ。Galaxy S24/S24 Ultraには、キーワードに基づいて壁紙を自動的に生成する機能や、天気情報に基づいてリアルタイムに壁紙を生成する「リアルタイム天気」という機能が搭載されている。アップデートを適用し、Galaxy AIに対応したGalaxy Z Fold5でも、これらの機能は利用できない。
壁紙を生成AIで作成する機能は搭載されていない。この点は、Galaxy S24/S24 Ultraとの違いと言っていい
ただし、壁紙はどちらかと言うと、端末のカスタマイズやパーソナライズに属する機能で、これがないからといって困るようなものではない。そこまでチップセットの処理能力を必要とする機能でもなく、なぜ過去のモデルが対応できなかったのかは不明ながら、実用面ではあってもなくても大きな差はないと言っていいだろう。日々使うようなAIの機能はきちんと網羅されている。
例えば、音声通話の内容を画面に文字で表示する「テキスト通話」や、それと翻訳を掛け合わせた「リアルタイム通訳」は、Galaxy S24/S24 Ultraとほぼ変わらないスピードで表示される。Galaxy Z Fold5の方が、開いた時の画面サイズが大きいため、むしろ表示された文字が読みやすいほど。ハードウエアの特徴によって、Galaxy AIがより使いやすくなっている部分もあるというわけだ。
テキスト通話やリアルタイム翻訳といった、音声通話をテキスト化したり、翻訳したりする機能にはきちんと対応している。表示も素早く、最新モデルとの差は感じられなかった