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わかりやすく解説!今さら聞けない「老後2000万円問題」の根拠と内訳

2024.07.08

2019年に金融庁が発表した資料が発端となり「老後2000万円問題」が話題となった。公的年金の制度的課題や自助努力を行う必要性が注目を浴びたため、記憶にあるという方も多いだろう。

しかし、2019年の騒動では資料の一部が切り取られているのも事実だ。今回は、老後2000万円問題をわかりやすく解説する。

金融庁が示す2000万円問題の根拠とその内訳とは?

まずは、老後2000万円問題の発端となった金融庁の資料から、「老後に2000万円が不足する」と試算した根拠から解説する。

■老後2000万円問題は金融庁の試算が発端

2019年に発表された、金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書である「高齢社会における資産形成・管理」で、老後生活に向けた貯蓄として2000万円が必要となる可能性が指摘された。

老後生活における毎月の収入が209,198円、支出が263,718円となっており、支出のほうが約55,000円多い。老後生活を30年間と仮定した場合、約2000万円が不足する、というのが計算の根拠だ。

この資料で例示されたのはあくまでも「高齢夫婦無職世帯の平均」であり、すべての世帯に当てはまるわけではない。しかし、「老後に2000万円を用意しなければならない」という金融庁の試算は、大きな衝撃を与えた。

■老後2000万円問題で勘違いされがちなポイント

老後2000万円問題では、資料の一部が切り取られて過剰に報道されている印象を受ける。資料をきちんと読めば、本当に老後生活を送るうえで2000万円が必要なのか冷静に判断できる。

金融庁の資料で試算されている「高齢夫婦無職世帯」では、毎月約55,000円の赤字が発生する計算だった。ただし、平均貯蓄額として2,484万円を保有している設定となっている。

つまり、2,484万円という資産を背景に「ある程度赤字が発生しても大丈夫だろう」と織り込んだうえで、生活をしていることが見込まれるのだ。「国民全員が、老後生活に突入すると毎月55,000円不足する」というわけではない。

例えば、リタイア時の貯蓄額が心もとない場合、生活費を年金支給額の範囲内に収めるように帳尻を合わせるだろう。また、ライフスタイルや居住地などが異なる以上、すべての国民全員が2000万円を用意しなければならないわけではない。

実際に、同資料には以下のような記載がある。

夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる。この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なる。当然不足しない場合もありうるが、これまでより長く生きる以上、いずれにせよ今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくるものと考えられる。重要なことは、長寿化の進展も踏まえて、年齢別、男女別の平均余命などを参考にしたうえで、老後の生活において公的年金以外で賄わなければいけない金額がどの程度になるか、考えてみることである。

つまり、金融庁の目的は老後不安を煽ることではない。国民一人一人が、自分に必要となる老後資産を計画的に用意することの重要性を説いているのだ。

※出典:金融庁金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」

老後に必要な資金の試算方法

■まずはマイナポータルで年金額の目安を確認

老後に必要な資金の試算方法は、受け取れる年金額と老後の生活費を知ることから始まる。受け取れる年金額の目安は、毎年送られてくるねんきん定期便や、マイナポータルで確認可能だ。

当たり前だが、生活費を収入の範囲内に収めれば家計は破綻しない。老後生活に経済的な不安を感じている場合は、まずは収入と支出を把握したうえで、必要な対策を練ることが第一歩となる。

なお、厚生労働省の資料によると、令和6年度の夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は230,483円だ。厚生年金に加入していない人が受け取れる国民年金の満額は68,000円となっている。

■老後生活の支出は現役時代の7割程度が目安

老後生活の支出は正確に把握するのは難しいものの、現役時代の7割程度が目安となる。例えば、現役時代の平均支出が月30万円の場合、老後生活突入後の生活費は21万円程度となる。

ゆとりのある暮らしを送りたいと考えている場合は、老後の生活費を現役時代の8割~9割に設定するとよいだろう。年金額を比較して、年金だけで生活できそうか、不足する場合はいくら不足するかをシミュレーションしよう。

あくまでも目安だが、老後生活を30年と仮定して「年金だけでは不足する年間生活費×30」を、当面の目標貯蓄額にするといいだろう。例えば、毎月30,000円の赤字が発生しそうな場合は「30,000×12×30=1,080万円」を、目標にする塩梅だ。

■医療費や介護費用の必要性も念頭に

さらに、高齢になると一般的に医療費や介護費用が発生しやすくなる。特に介護費用は「そもそも発生するのか」「いくら必要になるのか」「いつ必要になるのか」を正確に把握できないため、厄介だ。

そのため、普段の生活費とは別に、臨時的な支出に対応するための貯蓄も別途用意したい。公益財団法人生命保険文化センターが介護経験がある人に行った調査によると、月々の介護費用は平均8.3万円で、介護期間は平均5年1カ月だった。

単純計算で、必要な介護費用は約500万円となる。介護費用を別途用意する場合は、1,580万円を用意できると安心だ。

※出典:厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」

※出典:公益財団法人生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」

老後資金対策の代表例

20代は、老後資金を用意するうえで十分な期間を確保できる強みがある。貯蓄の習慣が身についていない場合は、できるだけ早い段階で貯蓄する習慣を身につけよう。

若い人はまだ収入が少ないケースが考えられるため、毎月数千円程度でも問題ない。一定額を貯蓄に回し、ある程度の貯蓄ができたらiDeCoやNISAを活用するのがおすすめだ。

iDeCoやNISAは、長期的な資産形成を行ううえで有効活用すべき制度だ。運用益が非課税になるという税制優遇を受けながら、長期投資を行えるメリットがある。

■30代の老後資金対策の代表例

ライフイベントが増える30代は、老後資金対策と並行しながら、結婚資金や住宅購入資金、子育て資金などを用意する必要がある。場合によっては、老後資金対策に回す貯蓄を減らし、ライフイベントに備えるための支出を優先すると良いだろう。

特に、子どもが誕生すると基礎生活費が増えるうえに、将来の教育資金を用意しなければならない。教育資金に関しては、確実性の高い定期預金や個人向け国債の活用を検討すると良いだろう。

老後資金を用意するためには、無理のない範囲でiDeCoやNISAを継続することを意識しよう。

■40代の老後資金対策の代表例

40代は、一般的に収入が安定する一方で、教育資金や住宅ローンの支払いが重なりやすい時期だ。無理をして老後資金対策を行うと、教育費や住宅費の支払いに難渋する事態になりかねないので、注意しよう。

30代と同様に、40代は可能な範囲で老後資金対策を行おう。必要に応じて支出の見直しを行い、健全な家計を営むことも意識すると良いだろう。

40代後半になったら、少しずつ老後生活に意識を向けよう。具体的な必要な資金を計算し、「毎月いくらの貯蓄が必要か」「運用するなら何%の利回りが必要か」を把握してほしい。

■50代の老後資金対策の代表例

50代になると、教育資金の支払いがひと段落している人も増えるだろう。役職定年前は高い収入を見込めることから、老後資金を用意するための最後のチャンスとも言える。

手元資金に余裕が出てきたら、積極的に老後資金の貯蓄へ充てるとよいだろう。iDeCoやNISAを継続しつつ、徐々に安全性が高い金融商品へシフトすることも検討しよう。

ただし、インフレリスクにも備えるため、リスク資産を適度に組み入れることも意識すべきだ。また、これまで以上にねんきん定期便を注意深くチェックすること、家計簿をつけて毎月の支出額を把握することも欠かせない。

文/柴田充輝
厚生労働省、保険業界、不動産業界での勤務を経て独立。FP1級、社会保険労務士、行政書士、宅建士などの資格を保有しており、特に家計の見直しや資産運用のアドバイスのほか、金融メディアで1000記事以上の執筆を手掛けている。

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