増益ペースから考える日本株の上昇ポテンシャル
名目GDPは国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計のため、企業の売上と密接な関係がある。
一方、企業のコストは原材料費など売上に連動する「変動費」と、地代家賃や人件費といった売上の水準に関わらず発生する「固定費」とに分けることができる。
そして、売上がある水準を超えて伸びてくると、売上一単位当たりの「固定費」が下がるため、利益率と利益額が急増することとなる。ホテルの客室稼働率や航空機の搭乗率がある水準を超えて上昇すると、会社の利益が急増するのはこのためだ。
■名目GDP1000兆円の企業業績へのインパクト
企業業績の観点から、「名目GDP1,000兆円」という数字はどれほどのインパクトがあるのか。現在の日本の名目GDPは約598兆円なので、今後26年かけて2050年までに1000兆円に到達すると仮定すると、幾何平均で年率約2.0%のペースで名目GDPが成長する計算となる。
2006年以降の名目GDPと企業の一株当たり利益(EPS)の関係について回帰分析を行ない、足元の名目GDPの数字を用いて試算をすると、年率+2.0%の名目GDPの成長は、EPSを約9.1%引き上げると試算できる。
■右肩上がりの上昇相場の行きつく先
株価はEPSと株価収益率(PER)の掛け算なので、仮にPERが一定でもEPSの増加につれて上昇する可能性が高まる。
日経平均4万円を起点に、今後26年間にわたり、年率約9.1%の増益と株価上昇が続くと仮定すると、2050年の日経平均は38万5038円(4万円×1.09126)となり、40万円の大台目前まで上昇する計算になる。
■日経平均40万円という「巨大な雪だるま」
「日経平均40万円」という数字だけをみると、現実味のない荒唐無稽なものに感じられるかもしれない。
しかし、株価指数が年率9.1%のペースで上昇していった場合、5年で1.5倍、10年で2.4倍、20年で5.7倍、そして30年後には13.6倍に上昇する計算になる。
「株式投資はスノーボール」と言ったのは、前出の米著名投資家バフェット氏だが、今後、日本の名目GDPが1000兆円を目指して拡大していくなら、長期・複利の株式投資により資産が「雪だるま式」に膨れ上がっていっても、決して不思議ではない。
調査結果まとめ
賃上げと物価上昇の好循環により、デフレ脱却が現実のものとなる可能性が高まっている。
仮に、岸田首相が言うように、21世紀前半に日本の名目GDPが1000兆円に達するなら、企業業績の拡大を通じて日本株は右肩上がりのトレンドを描く可能性が高まる。
もちろん、こうした野心的な目標の達成には少子高齢化による人口減少など、超えなくてはならないハードルがあるのも事実。とはいえ、「政策に売り無し」の相場格言に従うなら、「名目GDP1000兆円」に向けた政策対応が本格化する中、この流れに逆らうことなく投資を続けていくことが大切だと考えられる。
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エミン・ユルマズ氏 × 白木久史 氏
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希