2024年2月22日の日経平均株価は終値で3万9098円68銭をつけ、バブル期の1989年12月29日に記録した史上最高値3万8915円87銭を34年ぶりに更新。3月4日には、取引時間中として初めて4万円台を記録した。
しかし4月中旬になるとアメリカ株式市場の主要3指数の下落傾向、さらにイランのイスラエルに対する直接攻撃などによる中東情勢悪化の影響により、株価は一転して下落。
今後の動向について様々な予測が流れる中、三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川 雅浩氏よる関連リポートが届いたので概要をお伝えする。
日経平均は19日に今年最大の下げ幅を記録、米ハイテク株の調整や中東情勢緊迫化が背景
日経平均株価は4月19日、前日の終値から一時1300円以上急落する場面もみられたが、結局、前日比1011円35銭(2.7%)安の3万7068円35銭で取引を終え、今年最大の下げ幅を記録した。
大幅安の背景には、米ハイテク株の調整や中東情勢の緊迫化があると思われ、日経平均構成銘柄では、値がさの半導体関連銘柄を中心に売りが広がり、日経平均の下げ幅拡大につながった。
米ハイテク株の調整は、米景気の底堅さから利下げ観測が後退し、長期金利の水準が切り上っていることが主な要因とみられ、また、半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が先週、2024年の半導体市場全体の成長見通しを引き下げたことなども、材料視された模様だ。
中東情勢は、イスラエルとイランの報復の応酬が本格的な戦闘に発展するか否か、依然見通しにくい状況だ。
■米ハイテク株の調整は単に価格水準の調整、イスラエルとイランも個々の事情で本格衝突回避か
ここで、米ハイテク株の調整や中東情勢の緊迫化について、少し見方を整理する。
まず、ハイテク株の調整は、あくまで価格水準の調整であり、企業の技術力や成長性が完全に否定された失望売りではないとみている。
そのため、米国で雇用や物価の伸びが鈍化すれば、長期金利の上昇とハイテク株の調整は一服する可能性が高く、この先、米国の雇用や物価の経済指標を冷静に見極める必要があると考えられる。
次に、中東情勢について、イスラエルは、パレスチナ自治区のガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘を継続中で、国際社会での孤立が深まりつつあるなか、米国からもイランへの攻撃を反対されている。
イランは、米国による経済制裁の長期化で国内経済が悪化、インフレ率も高止まり、国民が不満を募らせている状況だ。
そのため、イスラエルとイランの対立は続くものの、本格的な衝突は回避される公算が大きいと思われる。
■日本株は企業業績、企業改革、賃金の新規材料待ち、構造変化進展で新たな上昇トレンドへ
日本株については、引き続き「企業業績」、「企業改革」、「賃金」の3つのポイントに注目したい。年明け以降、これらはいずれも改善傾向が確認されているが、4月2日付レポートでも解説したとおり、それ自体はすでに相場に織り込まれたと考えられる。
今後、この3つのポイントに関する焦点は、図表1のとおりだが、実際に新規の好材料として確認できるのは、今年半ば以降になる見込みだ。
そのため、日経平均は少なくとも4-6月期は横ばいか、やや調整気味で推移することも想定されるが、材料待ちのなかでは健全な値動きであり、むしろ1-3月期のような上昇が続いた場合は警戒が必要。
足元で大きく調整した日経平均だが、依然10年超続いた長期上昇トレンドの上値抵抗線を上抜けている(図表2)。
企業改革など日本株の構造変化が進めば、さらに右肩上がりの新たな長期上昇トレンドを形成することが期待される。
構成/清水眞希