帝国データバンクは、2024年4月以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについて、食品主要195社を対象に調査を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
※品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした。値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む。対象期間は3月29日9時時点。
4月の食品値上げは2806品目、年間では6千品目突破
主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした4月の飲食料品値上げは2806品目を数え、値上げ1回あたりの平均値上げ率は月平均約23%となった。前年同月の5404品目に比べて2598品目・48.1%減と、2024年以降の減少局面で初めて減少率が50%を下回った。
単月で2千品目を超える値上げが常態化していた前年半ばまでに比べると少ないものの、24年7月までの推移では最も多い水準となっている。
2024年の値上げ品目数は7月までの累計で6433品目となり、年間の平均値上げ率は19%に達した。23年の値上げ予定品目で6千品目到達が判明したのは22年11月時点だったのに対し、24年分では同年3月と、前年より4か月遅いペースだった。
2024年の値上げでは、前年に比べて人件費や物流費の増加、円安水準の長期化などの要因が拡大した。24年(1-7月)に予定される値上げ品目のうち、「円安」(29.4%)と「人件費」(24.4%)は23年同期を大幅に上回る水準だった。
なかでも「人件費」では、最低賃金の上昇以外にベースアップなど賃上げ由来の要因も出始めた点が特徴となる。
「原材料高」(89.1%)由来の値上げは、輸入小麦粉の価格引き上げといった要因を受けた2023年同期を下回る水準だった。
一方、24年3月以降はオリーブ油やゴマ、ノリ、カカオ豆など、猛暑や干ばつなど天候不順を要因とした不作により販売価格を引き上げた食品や飲料が相次いでおり、「原材料高」値上げが再燃しつつある。
■4月の値上げではハム・ソーセージの一斉値上げなど「加工食品」が1年ぶり2千品目超え
2024年4月の値上げは、ハム・ソーセージなど畜肉製品や冷凍食品など「加工食品」が2077品目を占め、全食品分野で最も多かった。加工食品が単月で2千品目を超えたのは、23年4月(2275品目)以来、1年ぶりとなる。
「調味料」(369品目)は2か月ぶりに100品目を超え、だし製品を中心にトマトケチャップ、唐辛子など香辛料製品が目立った。「酒類・飲料」(287品目)はウイスキーなどの洋酒、トマトジュース、インスタントコーヒーなどが多かった。
■今後の見通し〜「天候不順」が各食品に影響、「円安」の進行も懸念材料
記録的な猛暑や干ばつ、長雨など「天候不順」の影響で不作となったことから原材料価格が上昇し、関連する食品群ではコスト増を吸収できずに、値上げを余儀なくされたケースが目立ち始めた。2024年1-7月における「原材料高」由来の値上げは、品目数ベースで9割の水準に迫っている。
また、1ドル150円前後の円安水準により、輸入コストの押し上げによる原材料高も顕在化している。23年秋ごろから沈静化していた「原材料高」や「円安」を理由とした値上げが、今夏以降に本格化する可能性がある。
足元ではコストアップ先行の値上げが続くなか、賃上げによる人件費の増加を販売価格へ転嫁する動きや、「2024年問題」に関連した物流費の増加に伴う値上げもみられ、「原材料コスト」以外の要因による値上げは各食品メーカーで浸透していくとみられる。
ただ、家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」が2023年には27.8%に達し、約40年ぶりの高水準を記録した。
2年に及ぶ食品の値上げラッシュに晒された消費者の購買力は、節約志向の強まりから低下傾向が続き、販売数量の減少などに直結しやすい多品目・大幅値上げには慎重な判断も求められている。
2024年の値上げは、原材料高などが押し上げる形で月平均1千品目前後、年間で最大1.5万品目前後の緩やかな値上げペースが当面続くと想定される。
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希