見た目とは裏腹に激しく揺れるプリン
程なくしてテーブルにやってきたトスニプリンは文句ないかわいさだ。ポテっとしたねこのようなフォルム、点のような目鼻口がついた顔はどことなくレトロで懐かしさを感じる風貌である。そう、最近の韓国発のキャラクターは一定の世代以上には懐かしさ、レトロさを感じるのである。昔、近所の文房具店で見かけたキャラクターとでもいうべきか。
この一種「懐かしかわいさ」を感じるフォルムのトスニプリンだが、実際は想像以上の動きをする。テーブルに軽く触れただけでもお皿の上で揺れる揺れる、思った以上に首をぶんぶん振って激しく揺れるのである。食べる前に壊れてしまうのではないかと思わず不安になるレベル。
こちらとしては、無意識に「食べる前に壊してはいけない」と思ってしまうのだが、しかしそれは野暮な考えなのかもしれない。Tiktokでは、このかわいい外見に反して激しく揺れるギャップがウケているからだ。
Tiktokで「ねこプリン」を検索すると、激しく揺れるプリンが大量に現れる。激しく揺らしてこそ醍醐味であるがゆえに、せいぜい揺らす時間は10秒もあれば十分。この「揺らす」とTiktokの短尺動画の相性が抜群に良いのだ。
おわかりいただけたであろうか、トスニプリンは「見て揺らして撮って楽しむスイーツ」なのである。
ちなみに私が頼んだミルクティー味のトスニプリンは、まろやかでコクがあり食べごたえあるおいしさだった。ただ、ぷるぷるした形状でなければこれほど話題にはならなかったに違いない。
今、韓国発フードが流行する理由
コロナ禍を経て入国規制も撤廃された今、日本は空前の韓国ブームだ。韓国観光公社の発表によると、2023年に韓国を訪れた日本人観光客数は231万6000人と、中国や米国を抑えて最多であった。日本が1位になるのは実に12年ぶりである。円安にも関わらず、SNSでは「月1渡韓」をする人たちの投稿も多い。
物理的な距離の近さもあって韓国での流行が新大久保に入ってくるまでのタイムラグも非常に短い。韓国で話題になった商品は「渡韓」した人たちのSNSで紹介され、KPOPのアイドル、俳優たちなどのSNSや動画配信からあっという間に広がる。今や数か月も待たずして日本国内で体験することが可能である。
加えて、2020年からのコロナ禍、「愛の不時着」を中心とした第4次韓流ブームを迎えたことも大きい。初期の韓流ブームとは異なり、第4次ブームでは年代・性別を問わず韓国ドラマに夢中になる人が多かったことは記憶に新しいところ。ここ数年、ドラマをとおして韓国料理は我々にとってかなり身近になったといえるだろう。
実際、筆者を含め、「ドラマを見ていると韓国料理を食べたくなる」という友人知人は多い。そして、大抵の気になった料理は新大久保などへ行けば食べることができるのである。「見て食べて」が身近に楽しめる体験が、多くの人たちを夢中にさせているのではないだろうか。