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ブタから腎臓移植を受けた患者が退院、マサチューセッツ総合病院

2024.04.22

ブタ腎臓の移植を受けた患者が退院

米マサチューセッツ総合病院(MGH)において、遺伝子編集されたブタ腎臓のヒトへの初めての移植が行われ、手術を受けた62歳のRick Slaymanさんが、術後わずか2週間で退院し自宅に戻った。

Slaymanさんは、「長い体験の中で最も良好な健康状態である本日、病院を退院できる今、これは私が待ち望んでいた瞬間だ。私に起きたことは現実であって、人生で最も幸せな瞬間の一つである。生活の質(QOL)に影響を与えてきた透析の負担から解放され、家族、友人、愛する人たちと再び時間を過ごせることに興奮している。私に祝福を送ってくれた人たち、特に腎臓移植を待っているほかの患者たちに感謝したいと思う。今日という日は私だけでなく、彼らにとっても新たな始まりの日だ」と、MGH発のリリースで述べている。

Slaymanさんの考え方には専門家も同意を表している。その1人である米国における臓器移植仲介機関(United Network for Organ Sharing;UNOS)のDavid Klassen氏は、「まだ成すべきことはたくさん残されている。しかし、今回の移植治療の成功により、今後より多くの患者にメリットがもたらされる可能性は高いと言える」と述べている。

Slaymanさんが受けた治療は、ヒト以外の動物の臓器を移植に用いる「異種移植」という治療法。異なる動物の臓器をそのまま移植したのでは激しい拒絶反応が起きるため、治療として成立しない。しかし、ドナーとなる動物の遺伝子を編集することでヒトとの適合性を高めるという技術が進歩してきており、今回もその技術が用いられた。

MGHの医師らの話では、遺伝子編集されたブタからの臓器移植は過去に2回行われ、いずれも退院に至らなかったが、Slaymanさんの新しい腎臓は血液から老廃物を除去して尿を作り続けているという。

医師らによると、Slaymanさんに移植された腎臓は、ヒトにとって有害なブタの遺伝子を除去し、ヒトにとって有益な遺伝子を加えるという69の遺伝子編集が加えられたとのことだ。また、ブタのレトロウイルスを不活化することで、移植後の感染のリスクを取り除いたとしている。

Slaymanさんは長年にわたり2型糖尿病と高血圧を抱えている。2018年12月にヒトのドナーから腎臓移植を受けたが、5年後にその臓器が機能不全に陥り、2023年5月に透析を再開。それ以降、透析に起因する合併症のため入退院を繰り返していた。

UNOSによると米国の臓器移植待機患者は10万人以上に上り、ドナー臓器不足により毎日約17人が亡くなっているという。そして、移植待機患者が最も多い臓器は腎臓とのことだ。

MGHのLeonardo Riella氏も、「当院だけでも腎臓移植の待機リストは1,400人を超える。それらの患者の中には、残念ながら移植待機中に亡くなったり、移植を受けられないほど重篤な状態に陥ってしまったりする人もいる」と解説。そして「私は、異種移植が臓器不足の危機に対する有望な解決策であると強く確信している」としている。

医師らの説明によると、Slaymanさんに対する異種移植は、米食品医薬品局(FDA)が、ほかの治療選択肢のない重篤な状態の患者に対する人道的見地から許可された。また、拒絶反応を抑制するために、tegoprubartとravulizumabという新しい免疫抑制薬が用いられた。(HealthDay News 2024年4月4日)

Copyright (C) 2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: 米マサチューセッツ総合病院/Michelle Rose氏

(参考情報)
Press Release
https://www.massgeneral.org/news/press-release/worlds-first-genetically-edited-pig-kidney-transplant-into-living-recipient

構成/DIME編集部

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