絶景を眺めながらランチタイム
吉野町内へと入ると道は一方通行になり、周辺を散策する歩行者が一気に増えます。
滅多に車両が通らないため中には道の真ん中を歩く方もいますが、観光地のツーリングでは珍しいことではありません。歩行者に恐怖を与えないようゆっくり進むためにも、やはり乗り慣れたバイクで行くのがベストと言えるはずです。
ということで、お目当ての「花矢倉展望台」に到着です。
ここは吉野の街を一望でき、食事ができる有料席も設けられている絶好のお花見スポット。昨年放送されたTV番組「ブラタモリ」にも登場した人気の場所です。
今年は開花が遅かったため、残念ながらこの日の桜はまだ三分咲き。それでも頭上に咲く控えめな桜や、咲きかけのつぼみが山をほんのりとピンク色に染める景色には、この時期だけの特別感がありました。
ランチとして持って来たのは、吉野大峯林道へ入る前に立ち寄った「道の駅 吉野路黒滝」で購入した豚の角煮弁当です。
やわらかい豚バラ肉の塊が丸ごと1つ入って、1000円ほどと破格のお弁当。売り場には他にも10種類以上のお弁当があり、しかも注文後によそってもらえるので出来立てホカホカ。お花見に限らず、今後のツーリングで積極的に立ち寄りたくなるような幸せが詰まった道の駅でした。
お弁当を食べ始めたところで、眼下に広がる吉野の街からボワボワとこだまのような声が聴こえてきました。耳を澄ませると…なんだろう? 観光客への誘導の町内放送かしら??
時折音楽が混ざり、お祭りみたいな空気感。まるで町全体が春の陽気で温められているみたいです。
音だけではありません。風の中には植物が芽吹くような新鮮な緑の香りや、花の甘い香りも混ざっているような気がするのです。
角煮の甘辛いタレと、モッチリと脂がのったお肉と合わさって、春のオーラを胸いっぱいに吸い込んだみたい。なによりも豪華なランチとなったのでした。
お腹がいっぱいになったら再びクロスカブに乗り、吉野の街へと降りてみましょう。この先はさらに歩行者が増えるので、安全運転でがんばるぞ!
歩いて楽しい吉野の桜
花矢倉展望台を出て道なりに進むと、吉野の中心街へ向けて下り坂が続きます。体感ではわからないのですが気温が上がっているようで、先ほどの場所では三分咲きだった桜がほぼ満開になっています。
ただし坂道続きなので停まるのが難しい上、そもそも路肩駐輪はNG。下り切ったところでクロスカブを有料駐輪場に停めて、歩いて観光をすることにしました。
吉野町のメインストリートである県道15号は、桜の季節は歩行者天国になっています。昔ながらのお店や旅館が左右に並ぶ景色はまるでドラマの中のセットみたいです。
看板犬のいる旅館、店の裏に咲く色とりどりの花、のんびりと歩くだけでも情緒があってウキウキ。店員さんの呼び込みの声や観光客の笑い声があちこちで聞こえて、活気にあふれていました。
さて、吉野の名物といえば吉野葛。町内には本葛のスイーツを提供する店が多く連なり、今回は私もそのひとつに立ち寄ってみました。
ムッチリ・プルプルとした食感の葛餅は、甘さ控えめで上品な味。ちゅるんと喉越しがよく、黒蜜と抹茶との相性もばっちりです。なにより、お店の中は特等席。窓の外の桜が本当に素晴らしかったのです…!
お腹も心も満足してお店を出た、その時。後ろから「プロロロ…」と聴き慣れたスーパーカブの音が近づいてきました。
「歩行者天国なのにカブ?」不思議に思って振り返った私を追い越して行ったのは、真っ赤な郵政カブでした。
吉野町の住民・町内で働く警察官や郵便局員に対しては通行証が渡され、いつでも行き来できることになっているのだそう。伝統的な街並み、桜、赤い郵政カブ。古き良き日本を凝縮したような様子に、感慨深くなった瞬間でした。
ちなみに、吉野山は本来修験道の町。金峯山寺や吉野水分神社といった神社・仏閣があり、歴史好きにとっては外せないスポットです。桜以外の季節も是非立ち寄ってみてくださいね。
日が傾いてきた帰り道では、残念ながら、来た時と同様に路肩停車がNG。ヘルメットの中で「うわぁ~~っ!」と言いながら、この目に景色を全力で焼きつけながら走りました。
ちょうど見ごろを迎えた桜が山のいたる所をピンク色に染め上げる景色は、想像を絶するほど。「桃源郷ってこんな感じかもしれない…」なんて思っちゃいました。
最後は吉野川沿いまで道を下り、ようやく桜と一緒に停車できる場所へたどり着きました。
林道、桜、スイーツとエンジョイできた吉野ツーリング。
もしかしたらバイクよりも歩いて見た方が落ち着いてお花見できるのかもしれませんが、ライダーとしてはやはり、愛車とともに桜を楽しめたことが何よりも大切なのでした。
提供:ゴッドブリンク
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.