都心ならではの斬新な演出
フォーミュラEの市街地レースは、コース幅も狭く、常設のサーキットと違い観戦席とコースの距離も近い。まさに目の前で繰り広げられるレースが楽しめる。また大型スクリーンも各所に設置され、レース展開を確認しながら、また時折、全車のバッテリー残量なども紹介され、場内実況とともにリアルと自宅のテレビの両方で観戦できるような会場づくりもよく考えられていると思った。
エンジンを搭載するマシンの競争と違い、モーターのキーン、キーンという音やタイヤの摩擦音が聞こえる程度だからこそというべきか、はたまたドライバー(マシン)たちとの距離の近さもあってか、これまでのレース観戦とも少し異なる生々しさやライブ感が実に面白い。クラッシュ音も際立って聞こえる。
観客の一喜一憂する声は、小さな声援も日産への大声援もよく聞こえるし、レースを一層盛り上げていた。また段階的に順位を決めていく予選方法も決勝レースが1時間があっという間(特に今回は後半の見どころが濃くて)に過ぎ去っていくところも都心でレース観戦を気軽に楽しむというコンセプトに合っていると思う。
気軽に楽しむという点では会場の拠点となった東京ビッグサイトへの入場は無料だった。観戦スタンドでの観戦はチケットが必要だ、が屋内に設けられた「ファンビレッジ」エリアではスクリーンで観戦することができ、ここで表彰式も行なわれた。そのステージでは朝から音楽ライブなども開催され、飲食店も並び、さまざまな展示やキッズ向けに電動カート場も特設されていた。表彰式。初開催となった東京大会でもステージ前には多くの来場者が集まり、その間をドライバーたちはハイタッチをしながら通過していく。実際に訪れた他国でのレースやTVで国際映像で見る観客がドライバーを称えるこのシーンも好きな私としては日本初開催も成功したのかな、と思える瞬間だった。
フォーミュラEは今年9か国で16戦が行なわれる。ポイントランキングは、チームでは1位がジャガー、2位がポルシェ、3位が日産。今回2位に立ったオリバー・ローランドは現時点でのドライバーズポイントで3位にいる。今後の10戦も注目しながら来年の東京開催を楽しみに待ちたい。
■関連情報
https://www.fiaformulae.com/ja/calendar/2023-24/r5-tokyo
文/飯田裕子(モータージャーナリスト)