会計・商取引・給与計算など業務ソフトウエアを展開する弥生は、同社ユーザーの中小企業経営者・労務担当者を対象に「『年収の壁』についての意識調査」を実施。回答結果をグラフにまとめて発表した。
2023年10月施行の「年収の壁」対策については高い認知度
2023年10月に厚生労働省より施行された「年収の壁・支援強化パッケージ」の認知率は非常に高く、87.7%の回答者が認知していることが明らかになった。
その一方で、この施策の具体的な内容を知っている人は9.5%に留まり、認知しているものの内容を理解していない人も31.4%に。内容の理解に関しては、まだ進んでいない状況であることがわかる。
■「年収の壁」対策の利用意向は分かれる結果に
「年収の壁」対策について認知している人のうち、実際に利用している、また申請手続き中の回答者は15.1%に留まった。
利用していない人の利用意向に関しては、37.7%が利用したいと考えているが、31.9%は利用しないと回答。そして30.4%は未定と、回答者の間で意見が分かれる結果となった。
利用しない・未定の理由としては、「申請手続きが煩雑/面倒」「制度が理解できていない」といった課題が挙げられている。
利用したいと考える理由としては、「人材確保につながるから」「従業員のモチベーションが高まるから」という声が挙がり、中小企業が人材面で課題を抱えていることが示唆された。
■具体的な困りごとについて
・扶養の範囲内で働きたいアルバイトのシフト調整。本人も労働意欲がありこちらも仕事があるのに出勤調整をしなければならない。 それが年末の忙しい時期に重なるのでかなり困る(経営者/従業員2〜5人)
・時給や特別手当などの金額を上げると年収の壁にぶつかり、時間を減らすと雇用保険の要件(月20時間)を満たさない場合がある、人手不足も有り 悩ましいです。(経営者/従業員20〜30人)
・130万円年収制限のパート職員がいる。夫の会社の配偶者手当の関係で130万未満で働いている。 もっと、働いてもらいたい。(労務部門管理職/従業員2〜5人)
・人材不足 高齢化が進み若い人でスキルが高く向上心の高い人が入らない(労務部門管理職/従業員20〜30人)
・出来るだけ従業員の要望に沿えるようにとしたら、勤怠管理が複雑になった。年収の関係で有給ではなく欠勤にしたり、早退したり等。(労務担当/従業員20〜30人)
・会社・従業員双方が社会保険料の掛からない範囲内でと思っている。当然就業時間が短くなるが仕事量は変わらない。サービス残業や持ち帰りが増えるのではと心配している。盛期、給与が変わるので計算や届け出が面倒に思う。(労務担当/従業員5〜10人)
調査結果まとめ
今回の調査から、中小企業経営者や労務担当者の間では「年収の壁対策」に対する認知が高い一方で、具体的な内容の理解や実際の活用はまだ進んでいないことが示唆された。
利用意向にはばらつきがあり、特に人材確保や従業員モチベーション向上などを期待する声がある一方で、申請手続きの煩雑さや制度理解の不足などの課題が利用の障害として挙げられている。
また、調査において具体的なコメントとして、アルバイトの扶養範囲内の調整や人材不足、勤怠管理の複雑化などが浮かび上がった。このような課題解決には、対策の具体的な周知などが必要だと考えられる。
調査概要
調査期間/2024年3月5日~11日
調査対象/弥生にユーザー登録している中小企業の経営者 ・労務担当者1217名
調査方法/インターネットによるアンケート調査
出典/「中小企業の経営者・労務担当者の「年収の壁」に関する意識調査」弥生調べ
関連情報
https://www.yayoi-kk.co.jp
構成/清水眞希